インドが「損失と損害」基金の運用決定を歓迎、再エネ誓約は見送り

(インド)

ニューデリー発

2023年12月06日

インドのナレンドラ・モディ首相は12月1日、ドバイで開催されている国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)で「損失と損害」基金の運用化に関する決定が採択されたことについて、歓迎すると表明した。同首相は、世界人口の17%を抱えるインドの二酸化炭素(CO2)排出量のシェアは全体の4%にすぎないと強調した上で、インドが2021年11月に宣言(2021年11月5日記事参照)した次の目標を掲げていることにあらためて言及した。

  • 2030年までにインド経済の(GDP当たりの排出量)炭素強度を45%以上削減する。
  • 2030年までに総電力の50%を非化石燃料とする。
  • 2070年までに排出量ネットゼロを達成する。

また、モディ首相はインドが2023年のG20議長国として気候変動対策の重要性を説いてきたとし、2028年に開催が見込まれるCOP33の議長国への立候補も宣言した。

他方、再生可能エネルギーの設備容量を2030年までに3倍に増やすことを掲げた「グローバル再生可能・エネルギー効率誓約書」について、インドは署名を見送った。環境・森林・気候変動省のリーナ・ナンダン次官は現地メディア「ヒンドゥ」(12月3日)の取材に対し、「インドは再生可能エネルギーの拡大を推進していくが、エネルギー源の使用規制には縛られない」と述べている。インドの総発電容量(2023年5月末時点)の約半分は石炭火力発電が占め、石炭の約8割は国内調達による。このため、同誓約書で、再生可能エネルギーの拡大だけでなく石炭火力発電の段階的縮小もうたわれた点がインド政府にとって懸念点となったとみられている。

健康被害対策として気候変動に取り組む重要性を説く「気候と健康に関する宣言」についても、インドは支持を見送った。同宣言の草案で、冷却設備が必要な保健施設で排出ガス削減を目指すとされた部分について、インドは難色を示していたと現地経済紙「ミント」(12月3日)は報じている。同紙によると、インドは国連気候変動会議で初めて開かれた「健康の日」(12月3日)の会合にも欠席した。

(広木拓)

(インド)

ビジネス短信 6dd2e06598854b47