米商務省、同盟国などへの輸出許可申請の要件緩和する最終規則を発表

(米国)

ニューヨーク発

2023年12月11日

米国商務省産業安全保障局(BIS)は12月7日、同盟国やパートナー国に対する輸出で、許可(ライセンス)申請が必要な要件を緩和する最終規則を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。米国では、軍事転用リスクのあるデュアルユース品目などを輸出、再輸出などする際、輸出管理規則(EAR)にのっとり、輸出先や用途に応じて、事前にBISからライセンスを取得する必要がある。今回はその申請が必要となる要件を一部緩和することで、同盟国などとのスムーズな貿易取引を促すことが目的となっている。

今回発表された最終規則は2つある。1つ目外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますは、オーストラリア・グループ(AG、注1)が管理する特定の病原体や毒素、その関連技術に対するライセンス要件の緩和だ。これにより、AG加盟国・地域へこれら品目を輸出する際、化学兵器禁止条約の管理対象でない限り、ライセンス取得は不要となる。加えて、犯罪防止(Crime Control、CC)規定に基づくライセンス要求は、オーストリア、フィンランド、アイルランド、リヒテンシュタイン、韓国、スウェーデン、スイスに適用しないこととした。CC規定は、人権順守を促進する米国の外交政策を支援する目的で、犯罪取り締まりや摘発に関連する機器や関連技術、ソフトウエアを輸出、再輸出する場合などにライセンスが必要と定めている。BISは要件を緩和した理由に、これらの国が「グローバル輸出管理連合(GECC)」(注2)参加国であり、人権保護についてコミットメントを維持しているためと説明している。

2つ目の最終規則外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますは、特定のミサイル技術に関連する品目の輸出で、ライセンスを例外的に必要としない許可例外の対象国の拡大だ(注3)。例えば、民間有人航空機の生産に使用される特定の部品をカントリー・グループ「A:2」とGECCの両方に含まれる国へ輸出する際に、許可例外の対象とする。

これら2つの最終規則は、12月8日から有効となっている。

BISはまた、許可例外の1つの「戦略的貿易許可(STA)」の規則案に対するパブリックコメントを募集外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますするとも発表した。STAは、同盟国などとの貿易や軍事的相互運用性の促進を意図して、同盟国などに向けた特定の品目の輸出、再輸出などを許可例外とする措置だ。今般、BISは、輸出者や再輸出者などの負担軽減を図ってSTA利用を促進するため、STAの対象品目の明確化など規則の変更を提案した。規則案に対するパブリックコメントは、連邦政府のポータルサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(ID:BIS–2023–0019)からオンライン提出が可能で、期限は2024年2月6日までと定めている。

今回の最終規則などの発表について、米国商務省で輸出管理を管轄するアラン・エステベス次官は、これら規則が米国政府の現在の安全保障と外交政策の姿勢をより正確に反映したものとした上で、「最も親密な同盟国やパートナー国に向けられる品目のライセンス申請の負担を軽減することで、(同盟国などとの)協力を促進するためのより強力な環境を作ることができる」とその意義を述べた。

米政府は昨今、先端半導体に関する輸出管理強化など、他国に先行して強力な輸出管理を実施している。これに対し、産業界は、一国での厳しい措置ではなく、同盟国などとの連携を求めていた(2023年10月18日記事参照)。今回の発表は、同盟国などに米国の輸出管理と同等の規則策定を促すものではないが、同盟国へ輸出する際の負担を軽減することで、連携を強化する狙いがあるとみられる。

(注1)化学・生物兵器の拡散を防止することを目的とし、日米を含む42カ国とEUから成る複数国間の輸出管理枠組みで、オーストラリアが議長国を務めている。日本の外務省の解説外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます参照。

(注2)対ロシア輸出などについて、米国と同等の輸出管理を履行している国々の総称。

(注3)ただし、ミサイル技術上の理由から懸念される国や、米国の武器禁輸措置の対象となる国(カントリー・グループ「D:4」または「D:5」に指定された国)には適用されない。

(赤平大寿)

(米国)

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