中国、改正反スパイ法のビジネス環境への影響懸念に反論、米国の手法を非難

(中国、米国)

北京発

2023年12月11日

中国の国家安全部は12月7日、メッセンジャーアプリ「微信」上の公式アカウントで、「改正反スパイ法」がビジネス環境に影響を与えているとの見方に反論した(注)。

国家安全部は、改正反スパイ法が対中投資を萎縮させているとの見方について、外資系企業の設立数や中国国際輸入博覧会への出展企業数の増加を基に反論した。その上で、法治こそがビジネス環境として最も優れたものであり、改正反スパイ法はこれをさらに明確、正確、公開透明にするもので、中国の法治の進歩の表れだと評価した。

また、「安全は発展の前提であり、ビジネス環境の開放と安定を保つための基礎である」とし、反スパイ立法の強化は世界各地で行われている正当な措置だとした。改定により、条文が細分化され、企業が違法行為を行う不確実性を減らし、法律に基づいた経営を行う助けとなるとした。

商業データが「国家機密」とみなされ、正常なビジネス情報を得ることが「スパイ行為」とされる恐れについて、「ごく少数の、国家の安全に危害を加えるスパイ行為を取り締まるものであり、外資系企業の合法的な投資・経営にいかなる影響も与えない」とした。スパイ行為は法律的にも常識的にも明確な判別が可能だとし、「国家機密保護法」でも商業秘密は国家機密に含まれないとした。その上で、米国は「経済スパイ法」により商業秘密の窃取に重罰を科すことで、国際的な競争相手を抑圧する手段としており、近年は証拠を捏造(ねつぞう)し「中国の経済スパイ案件」を作り出していると非難した。

また、外資系企業に対する恣意(しい)的な法執行リスクについては、反スパイ法の執行はすべての過程で厳格な制限があり、外資系企業を含む組織・個人の合法的な権利を十分に保障するものだとした。

同時に、いくつかの国は「安全保障」を政治問題化、武器化して中国の正常な経済・貿易活動と発展の権利を押さえつけようとしているとした。その上で、米国はこれまで1,500以上の中国の事業体や個人に対して制裁を行い、市場経済のルールにそむき、中国企業の生存と発展に重大な影響を与えていると非難した。

中国は安全保障を発展よりも重視しているとの見方については、「発展と安全保障は二者択一ではない」とし、発展を第一の重要な任務としながら、同時に安全保障との統一を重視し、質の高い、効率的な、公平かつ持続可能で、安全な発展の実現に努力するとした。

(注)中国の改正反スパイ法は7月1日に施行され、米国政府が注意喚起を行うなど外資系企業の間で警戒が高まっている(2023年7月3日記事、2023年8月30日記事参照)。

(河野円洋)

(中国、米国)

ビジネス短信 344178b19820affc