特定国への輸入依存度引き下げのため、「産業サプライチェーン3050戦略」を策定

(韓国)

ソウル発

2023年12月19日

韓国の産業通商資源部は12月13日、方文圭(パン・ムンギュ)長官主宰の「産業サプライチェーン戦略会議」(注1)を開催し、サプライチェーン安定化が必要な品目の特定国への輸入依存度引き下げのための「産業サプライチェーン3050戦略」を発表した。韓国が輸入する素材・部品・装置4,458品目(2022年時点)のうち、輸入額100万ドル以上かつ特定国への輸入依存度50%以上の品目は1,719品目、素材・部品・装置全品目に占める割合は38.6%だった。この割合は先進7カ国(G7)に比べて高く、グローバルサプライチェーンの混乱に対して脆弱(ぜいじゃく)と分析した。その上で、特に、産業面への影響が大きい185品目(注2)を選定し、これら品目の特定国への輸入依存度を平均70%(2022年時点)から50%以下に引き下げる目標を示した。

目標達成のため、次の「10大履行課題」と「8大産業サプライチェーン先導プロジェクト」を推進する計画だ。

〇「10大履行課題」

  1. サプライチェーン対応のための制度および推進体制の構築
  2. 早期警報システムの高度化および危機時の迅速対応体制の稼働
  3. 重要品目の自立生産基盤の拡充
  4. コア技術の早期開発および生産施設の構築
  5. 国内生産能力拡充のための戦略的な対内直接投資・在外韓国系企業の国内回帰の支援
  6. サプライチェーンリスク分散のための輸入元の多角化
  7. 生産拠点多角化のための海外でのM&A・「Pターン(韓国企業の海外拠点の第三国への移転)」支援
  8. 重要鉱物の公的備蓄の拡大および民間在庫確保の支援
  9. 資源保有国との協力基盤の拡充および民間プロジェクトの支援
  10. 再資源化技術の開発および体制構築

〇「8大産業サプライチェーン先導プロジェクト」:サプライチェーンの不確実性が高い次の8品目について、自立化・多角化・資源確保といった3つの観点でプロジェクトを推進する。

  1. 負極材(人造・天然黒鉛)
  2. 正極材〔硫酸ニッケル、NCM(ニッケル・コバルト・マンガン)前駆体、水酸化リチウム〕
  3. 半導体素材(蛍石、無水フッ酸)
  4. 半導体向け希ガス(ネオン、クリプトン、キセノン)
  5. レアアース永久磁石
  6. 尿素
  7. マグネシウム
  8. モリブデン

なお、サプライチェーン3法(注3)のうち、12月8日に「経済安全保障のための供給網安定化支援基本法案」が国会で議決され、12月14日には「素材・部品・装置産業の競争力強化および供給網安定化のための特別措置法」の改正法案が施行されており、サプライチェーン管理のための法制度システムの整備とともに、サプライチェーン政策の新しい枠組みとして同戦略が策定された(2023年11月15日付地域・分析レポート参照)(2023年12月13日記事参照)。

(注1)産業通商資源部長官、各業界の代表企業(ポスコフューチャーエム、ソンイルハイテクなど8社)や業界団体(半導体、二次電池、自動車など6団体)、KOTRA(大韓貿易投資振興公社)、韓国貿易協会などが参加。

(注2)業種としては二次電池(19品目)、半導体(17品目)、ディスプレー(12品目)、自動車(11品目)などで、具体的には、半導体向け希ガス、人造・天然黒鉛、レアアース(レアアース永久磁石を含む)、水酸化リチウム、尿素など、中国や日本、米国などに依存する品目が多く含まれる。

(注3)「素材・部品・装置産業の競争力強化および供給網安定化のための特別措置法」「経済安全保障のための供給網安定化支援基本法」と、「国家資源安全保障特別法」(国会法制司法委員会で係留中)

(橋爪直輝)

(韓国)

ビジネス短信 2916aa27700be5e2