メキシコ政府、キャタピラー子会社での労働権侵害調査完了を発表

(メキシコ、米国)

メキシコ発

2023年12月15日

メキシコ経済省(SE)と労働社会保障省(STPS)は12月12日、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)に基づいて米国通商代表部(USTR)から確認要請を受けていた労働権侵害に関する調査を完了したことを発表した。米国政府には12月8日に調査結果を通知したとしている。

確認要請があったのは、メキシコ北東部タマウリパス州ヌエボラレドに所在する米建機大手キャタピラーの子会社テクノロヒア・モディフィカーダで、USMCAが定める「事業所特定の迅速な労働問題対応メカニズム(RRM)」に基づき、10月26日にUSTRからメキシコ政府に事実確認が要請されていた(2023年10月30日記事参照)。

要請を受けたメキシコ政府が調査を行う場合には、45日以内に完了する必要がある。この調査の結果、企業側による労働権侵害に当たる行為が確かに存在したため、当該企業はSTPSの指導の下、次の対応を行ったとしている。

  1. 非干渉宣言と職員の行動指針の発表、その普及
  2. 非干渉宣言と行動指針について、信任労働者(組合に属さない労働者)と管理職への研修を実施
  3. STPSによる信任労働者(組合に属さない労働者)と管理職への結社の自由、団体交渉権に関する研修の提供
  4. 不当解雇された労働者が提訴した際に求めた福利厚生について、当該労働者の復職も含めて全面的に同意
  5. 裁判官の判決に従い、ストライキの状況を考慮した上で、不当解雇された労働者の事実上の復職を提案
  6. スト終結後にかかる復職を実現し、同工場の全労働者に研修を施すことをSTPSとの間で約束

労働権の侵害が解決したかどうかは今後、メキシコ政府と米国政府の間で議論される。

米国は2023年に入ってからRRM手続きを多数発動しており、2023年は既に12件目、また、USMCA発効からは合計で17件発動しており(2023年11月21日記事参照)、12月14日付で発表されたコアウイラ州ピエドラスネグラスに位置するフジクラ・オートモーティブ・メキシコの例で18件目となった。

(渡邊千尋)

(メキシコ、米国)

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