全米初の中心市街地における通行料徴収プログラムに前進、マンハッタンでの環境影響評価報告書を公表
(米国)
ニューヨーク発
2023年05月17日
米国ニューヨーク州の首都圏交通局(MTA)、ニューヨーク州交通局、ニューヨーク市交通局は4月12日、渋滞解消などを目的としたニューヨーク市マンハッタン区中心部(CBD)における通行料徴収プログラムの最終環境影響評価報告書(注)を公表した。
報告書は同日から30日間、オンライン上で公開される。30日経過後は、連邦高速道路管理庁(FHWA)が最終決定を下し、潜在的な環境影響についての審査を完了する。仮に承認を得られれば、米国初の中心市街地における通行料徴収プログラムの着工に向けた大きな節目となる。
MTAでは、同プログラムが実現すれば、マンハッタン中心部における大気汚染、深刻な交通渋滞の解消につながるほか、ニューヨーク市の公共交通機関の現代化のための資金源になると期待している。報告書では、同プログラムの実施により、CBDに流入する車両数を約15~20%、1日当たり約11万~14万3,000台減少させると推定する。
通行料徴収の対象となるのはマンハッタン区60丁目以南の地域で、オフィスビルや商業ビルが集中するミッドタウンから、行政や金融機関の集まるロウワー・マンハッタンに至るまでのほぼ全域となる。報道によると、早ければ2024年4月にも同地域を走行する車両に対し最大23ドルの課金が開始される見通し(ブルームバーグ5月12日)。
報告書には、通行料金導入に伴う影響緩和を目的に、低所得者を対象とした月間10回を超える利用に対する25%の割引、トラックなどの車両を対象とした午前0時から午前4時までの利用における50%以上の割引、CBDに在住する総所得6万ドル未満の低所得者向け税額控除の提供、などの対策も盛り込まれた。今後、6人の委員からなる交通モビリティ検討委員会(Traffic Mobility Review Board)が通行料や割引、適用除外などの料金体系を検討する。
新型コロナウイルスの感染減少に伴い、通勤やレジャーなどでマンハッタンを訪れる人は増えている。MTAによると、マンハッタンと郊外の住宅地を結ぶメトロノース鉄道の乗車人数は4月9日に、パンデミック前の2020年3月6日以来、初めて1日の乗車人数が20万人を突破した。最終環境影響評価報告書の公表により、プログラムは節目を迎えたが、新たな通行料の徴収には反対派も多く、このまま着工に向けて順調に進むのか、全米初の取り組みの行方が注目される。
(注)ニューヨーク州と、隣接するニュージャージー州、コネチカット州の28郡において、同プログラムが交通渋滞、交通量、大気汚染、その他多くの環境指標に与える影響を分析したもの。調査地域には、2,200万人が居住する。
(米山洋)
(米国)
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