第3四半期GDP、前年同期比9.3%増で2期連続の大幅プラス成長
(ウクライナ)
ワルシャワ発
2023年12月15日
ウクライナ国家統計局の発表(12月11日)によると、同国の2023年第3四半期(7〜9月)の実質GDP成長率は前年同期比9.3%だった。前期(2023年9月28日記事参照)の伸び率と比べて10.2ポイント減少したが、2期連続の大幅なプラス成長となった。前期比(季節調整済み)では0.7%だった。
2023年通年のGDP成長率見通しについては、ウクライナ国立銀行(NBU、中央銀行)が、8月時点の2.9%から2.0ポイント上方修正し、4.9%のプラス成長と予想した(NBU発表11月2日)。NBUは経済回復の要因として、戦時下における企業および国民の高い適用力、予想を上回る農作物の豊作、輸出代替ルートの拡大、予算支出の増加を挙げている。2024年の成長率は3.6%と、2023年8月時点の3.5%とほぼ同等とし、2025年は最大6%と2023年8月時点の6.8%から下方修正した。
IMFも、ウクライナのマクロ経済と金融の安定は維持されているとし、同国の2023年のGDP成長率見通しを従来の1~3%から4.5%に引き上げた(2023年11月10日付プレスリリース)。IMFは、ウクライナ経済の強靭(きょうじん)さが経済の回復や、インフレ率の急激な改善をもたらしたほか、十分な外貨準備を背景にNBUが固定相場制から離脱(2023年10月6日記事参照)したものの、安定した外国為替市場につながっていると評価した(2023年12月11日付プレスリリース)。なおIMFは、戦争の継続により、2024年の成長率は3~4%に若干鈍化すると予想した。
経済の見通し改善の流れは、政策金利の引き下げやインフレ率が改善していることからも裏付けられる。NBUは2023年10月26日、主要政策金利を20%から16%に引き下げると発表し、翌日27日から適用した。また、2023年12月末時点のインフレ率見通しを10.6%から5.8%に引き下げた。NBUはこの見直しの主な要因として、農作物の豊作による食料品価格への影響を挙げている。
他方、NBUは、2024年のインフレ率見通しを従来の8.5%から9.8%に引き上げている。引き上げの要因として、比較基準となる2023年の食料品価格が低いことに加え、安全保障リスク見直しによるビジネスコストの上昇圧力、賃金の上昇、公定価格引き上げの加速を挙げている。
(柴田哲男、坂口良平)
(ウクライナ)
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