デューディリジェンス法施行から1年、2024年1月から対象企業拡大

(ドイツ)

調査部欧州課

2023年12月27日

ドイツでは、サプライチェーン・デューディリジェンス法(Lieferkettensorgfaltspflichtengesetz:LkSG)が2023年1月1日から施行されている。同法の履行確保を担当する連邦経済・輸出管理庁(BAFA)は12月21日、施行1年を回顧するコメントを発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

発表によると、BAFAは、LkSGが適用され、注意義務(デューディリジェンス)が課される企業は「大部分が同法の要求をきちんと実施しており、グローバルサプライチェーン上の人権状況の改善へ積極的に貢献している」と肯定的に評価。

また、BAFAが2023年に企業の検査・管理を実施したのは486件で、対象となった企業の業種は自動車、化学、製薬、機械、エネルギー、家具、繊維、食品・飲料。BAFAへ寄せられた苦情(注)は38件で、うち20件はデューディリジェンス法による注意義務と関連がない、または証明が不十分なものだった。6件の苦情については、企業に連絡を取り、その後企業から苦情に対処しているとの返答を受けているという。これまで企業への罰則が適用された事例はない。

問題点として、BAFAは一部のLkSG適用企業が注意義務の実施をサプライヤーに転嫁しようとしていることを指摘。この問題点に対しては、BAFAはLkSG非適用の中小規模のサプライヤー向けにガイダンスを作成(2023年11月8日記事参照)。LkSGは適用企業が注意義務を履行するためにサプライヤーなど非適用企業に協力を求めることを想定している一方、非適用企業に協力する義務を課すものではないとの基本的な枠組みなどを説明している。

ドイツ商工会議所連合会(DIHK)は12月22日、BAFAのコメントを受け、企業側の批判的な評価を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。LkSGは同法が適用されている従業員3,000人以上の企業だけでなく、非適用の規模の企業にも影響があるという。LkSG非適用の企業でも適用企業と取引がある場合には、適用企業が定めるデューディリジェンス基準を満たすことを求められるためだ。実際に、ペーター・アドリアンDIHK会頭は、自身の会社は大企業へ機械を納品しており、機械の製造には157の上流サプライヤーが関わっているが、納品先のデューディリジェンス基準を全上流サプライヤーが満たしていることを検証する必要があるとして、困難さを訴えた。

他方、デュッセルドルフ商工会議所が 2023 年 8 月に発表した会員企業アンケート調査外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(調査実施期間:2023 年 6 月、回答企業数約 180社)では、LkSGの自社事業に対する肯定的な影響も確認された。同法の自社への肯定的な影響として(複数回答)、「新規顧客の獲得」が 39%、「サプライチェーンマネジメントの一層の透明性と効率性/購買プロセスの改善」が35%、「競争力が増した」が 24%という回答だった。

2024年1月1日から、LkSGの適用対象が現在の従業員3,000人以上から1,000人以上の企業に拡大される。

(注)2023年にBAFAへ寄せられた主な苦情は、ジェトロ調査レポート「『サプライチェーンと人権』に関する政策と企業への適用・対応事例(改定第九版)PDFファイル(1.1MB)」の36~37ページ参照。

(二片すず)

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