貿易産業省、投資審査に関する法案を国会に提出

(シンガポール)

シンガポール発

2023年11月09日

シンガポール貿易産業省(MTI)は11月3日、同国の経済回復力と国家安全保障を強化しながら事業体の継続性を保つため、「重要投資審査法案」を国会に提出すること外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを明らかにした。同国では現在、電気通信や銀行、公益事業などの一部規制部門の事業体に対する監視・管理のため、事業部門別の法令によって投資の監督を行っている(ジェトロの外資に関する規制参照)。

MTIの発表によると、新法により、現行法で規制対象とならない分野の事業体の一部に対しても投資規制を行うことを目的とする。新たな投資制度は国内や外国の投資家双方に適用され、シンガポールの国家安全保障上重要な事業体のみが新制度の下で「指定事業体」として、指定と規制の対象となる。指定を受けていない場合にも、同国の安全保障上の利益に反する行為を行った企業は一定の状況の下で取り引きを審査される場合がある。

法案の主な内容は次のとおり。

  1. シンガポールで法人設立された事業体、活動を行う事業体、または同国で物品またはサービスを提供する事業体が指定事業体となり得る(注1)。指定を受けた場合、事業体の所有権・支配権に関する特定の変更(注2)の際の担当大臣への通知や、承認を受ける義務を負うほか、最高経営責任者(CEO)など主要役員の変更や会社清算についても、大臣による事前の承認を必要とする。
  2. 指定されていない事業体についても、シンガポールの国家安全保障上の利益に反する行為を行った場合には、大臣に所有権・支配権の取引を審査する権限を与える。
  3. 当事者は大臣による決定に不服がある場合、審判を受けることができる。審判法廷は内閣の助言に基づいて大統領に任命された議長(最高裁判所裁判官)を含む3人で構成する。

ガン・キムヨン貿易産業相は「シンガポールが世界とつながっていることは重要で、企業が安心して投資できるような信頼できるビジネスハブとしての地位を継続的に強化していかなければならない」と述べた上で、同国の重要な事業体のほとんどは既に現行法による規制を受けているため、指定を受ける事業体はそれほど多くないとしながらも、「影響を受けるビジネスへの全体的な影響を最小限に抑え、エコシステムが活気を維持できるよう、関係者は引き続き緊密に関与していく」としている。

同法案は11月6日に国会へ提出されている。第2回審議は2024年1月に予定されている次回会期で行われ、法案が国会を通過した場合には数カ月以内に発効が予定されている(11月4日付「ストレーツ・タイムズ」紙)。

(注1)指定事業体となり得る要件の詳細については、現時点で明らかにされていない。

(注2)指定事業体の支配権購入者は5%の権利を得た後、大臣に通知しなければならない。また、12%、25%、50%の支配権(間接的なものを含む)を得ようとする場合には、事前に大臣による承認を必要とする。このほか、売却者は50%または75%の支配者でなくなる場合、大臣による承認を必要とする。加えて、指定事業体としても、所有権・支配権の変更を認識した際には、大臣に対する通知をしなければならない。必要な手続きを経ずに行われた取引は無効となるが、重大な影響を受け得る当事者は有効性を確認する通知を発するよう求めることができる。

(糸川更恵)

(シンガポール)

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