米議会諮問委、先端半導体の対中輸出管理の年次評価を提言

(米国、中国)

ニューヨーク発

2023年11月15日

米国連邦議会の諮問委員会である米中経済・安全保障調査委員会(USCC)は11月14日、2023年の年次報告書外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを議会に提出した。報告書では、米中の経済や安全保障面での関係、中国政府の国外での活動、中国の経済的競争力、軍事能力、中国と欧州、台湾、香港との関係に関する5つの章を設け、議会が取るべき30の提言を示した。

USCCは2023年の米中関係に関し、米国は中国との外交的関与を追求しつつ、経済と安全保障面でリスクの低減を図ったと指摘した。一方、政府高官の対話にもかかわらず、中国は米国の懸念に応えるような具体的な行動を起こしていないとして、対中関与の成果には懐疑的な見方を示した。

報告書の提言は、中国の軍事能力や対外関係に関するものが過半を占めている。中国の軍事能力を巡っては、軍民融合戦略に基づいて、人工知能(AI)の軍事利用で急速な進歩を遂げていると危機感を示した。中国のAI分野の民間企業が米国の技術を活用して中国人民解放軍に製品を供給しているとして、米国の輸出管理や投資規制の見直しを促した。

輸出管理については、先端半導体に関する対中輸出規制の有効性を政府説明責任局(GAO)に毎年評価させるよう求めた(2023年10月18日記事参照)。2022年10月に導入された同措置は中国の技術開発を遅らせるとする一方、中国による先端半導体の製造を必ずしも防げていないと提起した。この問題に対処するため、評価内容には中国による輸出管理の迂回の取り組みも含めた。また、効果的な輸出管理には多国間協調が必要だとして、他国との協力度合いも評価するよう要請した。

投資規制に関しては、現行の制度は米国企業の技術や専門性が中国の防衛産業へ流入するのを十分に阻止できていないと問題視した。対米外国投資委員会(CFIUS、注)の権限を拡大し、「中国製造2025」などで優先分野とされている産業に関わる米国企業への投資も審査できるようにすべきと提言した。国家安全保障に関わるプロジェクトで米国政府から補助金を受けている米国企業などへの投資も審査すべき対象に挙げた。

(注)CFIUSは、外国からの投資が米国の国家安全保障に与えるリスクを審査する省庁横断の組織。CFIUSによる投資審査の動向については、2023年10月2日付地域・分析レポート参照

(甲斐野裕之)

(米国、中国)

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