中国、カナダによるWeChat禁止に反対、公平・公正・無差別のビジネス環境を要望

(中国、カナダ)

北京発

2023年11月02日

中国の外交部は10月31日、カナダが政府のモバイル端末における中国のメッセンジャーアプリ「WeChat」(注1)の使用を禁止外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますしたことについて、反対を表明した。

外交部は、Wechatは民間企業によるソーシャルメディアプラットフォームだとした上で、中国政府は中国企業が海外でビジネスを行うにあたり、現地の法律・法規を順守するよう一貫して求めてきたとした。

その上で、いかなる証拠もない中で、カナダがデータ安全という名目で中国企業を標的とする禁止令を出したことは、典型的な国家安全概念の一般化であり、国家権力を乱用し理由なく特定の国の企業を抑圧するもので、「断固として反対する」とした。

また、カナダがイデオロギー的な偏見を捨て去り、市場経済の原則を順守し、中国企業に公平・公正・無差別のビジネス環境を提供することを要望するとした(注2)。

なお、カナダはWechatのほか、ロシアのカペルスキーによるアプリケーションスイート(注3)の使用も禁止する。禁止の理由として、これらのアプリが端末内の大量の情報にアクセスできるなど、プライバシーとセキュリティーに許容できないレベルのリスクをもたらしていることを挙げた。同時に、現時点では政府の情報が危険にさらされた証拠はないとしている。

これらのアプリは、10月30日から政府のモバイル端末より削除され、将来的にはダウンロードも禁止される。一方、一般での使用については「個人の選択」としている。

カナダでは、2022年5月に第5世代移動通信システム(5G)からのファーウェイとZTEの排除を決めたほか、2023年2月には政府のモバイル端末でのTikTokの使用を禁止している(2023年3月1日記事参照)。

(注1)「WeChat」は、中国内のアプリストアなどでダウンロードできる「微信(Weixin)」の国際版とされており、両者は厳密には異なるアプリとされる。

(注2)中国政府は、EUによる中国製の電気自動車(EV)に関する調査に対しても、「公平・無差別・予見可能な市場環境」を要望している(2023年9月19日記事参照)

(注3)特定の用途向けによく用いられる複数のアプリケーションソフトを、一そろいで提供するもの。

(河野円洋)

(中国、カナダ)

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