カスピ海横断国際輸送ルートの課題解決に関係国が協力

(カザフスタン、日本)

調査部欧州課

2023年11月10日

東京で11月1日に開催された第8回日本カザフスタン経済官民合同協議会の第3分科会「輸送・ロジスティクスおよび都市インフラ整備分野における協力」で、日本から中央アジアへの輸送の現状と課題、今後の発展目標について、両国関係者が報告した。中でも大きく取り上げられたカスピ海横断国際輸送ルート(TCITR)は、2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻開始以降、ロシアを経由しないで欧州に抜ける輸送ルートとして、国際的な関心が高まっている(2023年5月10日記事参照)。

外務省欧州局中央アジア・コーカサス室の市場裕昭室長は、インフラ整備の立ち遅れや、通過国間の通関規則の不調和、データの非共有など、ハード・ソフト両面のボトルネックの問題を解決する必要があると指摘した。TCITRは2024年に予定されている「中央アジア+日本」サミットでも重要なテーマなので、関係各国と今後一層の調整と連携を行っていくと述べた。

カスピ海横断国際輸送ルート協会のガイダル・アブディケリモフ事務局長は、同協会がTCITRのボトルネック解消と輸送日数短縮に努めており、2023年は中国からジョージア南部まで14~18日で輸送することを目標にしていると述べた。

日新グローバル戦略部の尾関誠主席は、日本から中央アジアへのコンテナ輸送の最新状況について報告した。主な輸送ルートは中国、カザフスタン経由の「チャイナランドブリッジ」で、その補完としてスエズ運河経由で黒海沿岸のジョージアの港に達する海路があると説明した。中央アジアへの輸送コストは高く、新型コロナウイルス流行前のレベルに戻った2023年9月で、日本~ハンブルクの運賃の約6~10倍。所要日数は中国での滞留に大きく左右され、早くて40日、遅いと150日かかるという。TCITRは、a.運賃と輸送日数、b.鉄道利用による環境配慮、c.ロシアとベラルーシを迂回(うかい)することによる安全性の3つの要件を満たすルートだと評価した。

カザフスタン運輸省運輸委員会のカスィム・トレポフ副議長は、カザフスタン、アゼルバイジャン、ジョージア、トルコの4カ国でTCITR開発に関するロードマップに署名し、協調してボトルネック解消に取り組んでいると述べた。また、1,300キロの鉄道建設、1万1,000キロの道路建設・修理、国境検査所のデジタル化、主要3空港の改修など、貨物輸送の発展計画を説明した。

日建設計エンジニアリング部門構造設計グループの江利川俊明アソシエイトは、カザフスタンには地震発生リスクが高い地帯があるため、ソフト・ハード両面の耐震システム導入によって地震被害を小さくする方法を提案した。

エア・アスタナのパティ・リュング地域マネジャーは、2024年に日本~カザフスタン直行便が就航する予定と明らかにした。

(小林圭子)

(カザフスタン、日本)

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