カザフスタン政府、アクタウ港と周辺地域のコンテナ輸送能力強化へ

(カザフスタン)

タシケント発

2023年05月10日

ロシアによるウクライナ侵攻開始(2022年2月)以後、カザフスタン政府は中央アジアを経由する輸送ルートの多様化に力を入れている。同政府が振興するカスピ海経由輸送ルートの重要な中継点であるアクタウ港を運営する、アクタウ国際商業港のカイラト・カリオルラ主任マネージャーに2022年の実績と今後の港湾能力拡大計画について話を聞いた(2023年4月24日)。

(問)2022年2月のウクライナ紛争発生直後は物流も混乱した。

(答)アクタウ港の2022年のコンテナ取り扱い実績は前年比11%増の3万700TEU(20フィートコンテナ換算)だった。うち、中国と欧州を結ぶ「カスピ海横断国際輸送路」(TCITR、注1)として利用されたコンテナは2万7,000TEUで、前年比53%増と大きく伸びた。ロシアを経由していた貨物が一部流れてきた。2022年1月のコンテナ取り扱いは1,300TEUだったが、4月には2,600TEUへ増加。アクタウ港と(カスピ海対岸の)バクー港を結ぶコンテナ輸送用フィーダー船を従来の2隻から6隻まで増やして対応した。コンテナ急増時にはアゼルバイジャンとジョージア間の貨物輸送がスムーズに行かず、アクタウ港に4,000本近いコンテナが滞留したこともあった。現在、状況は通常に戻った。中国から欧州向けの貨物が(鉄道輸送から)海上輸送へ流れたこともあり、2023年のコンテナ取り扱い実績は2022年比で減少する見込み。

(問)アクタウ港の今後の開発計画について。

(答)コンテナ輸送能力を強化する。欧州復興開発銀行(EBRD)の資金を受けて、2023年内にバース(注2)の拡張と大型クレーンの導入を実施する。政府は、アクタウ港に隣接する19ヘクタールの土地に「コンテナハブ」(コンテナターミナル)を建設すべく、シンガポールや中東などの投資家と交渉を行っている。2023年末までには、技術的仕様を確定する。コンテナ輸送能力を、現行の7万TEUから将来的には30万TEUまで拡大させる計画がある。港湾当局とコンテナターミナルの投資家への負担を下げるため、政府がアクタウ港と周辺地域を特別経済区に指定し、様々な税制上の恩恵を受けることが可能となった。TCITR自体の輸送能力を引き上げるため、参加国でロードマップを採択したほか、西(中国から欧州)向けに偏りがちなコンテナ貨物について、東向け貨物を対象に33%(トルコの港発、20フィートコンテナ対象)~50%(ジョージア・ポチ港発、20および40フィートコンテナ対象)の範囲で料金の割引を行っており、偏りはかなり是正されている。

写真 アクタウ国際商業港オフィスビル(ジェトロ撮影)

アクタウ国際商業港オフィスビル(ジェトロ撮影)

(注1)中国、カザフスタン、カスピ海、アゼルバイジャン、ジョージア、トルコ、欧州諸国をつなぐ国際輸送ルート。2018年5月14日付地域・分析レポート参照

(注2)船舶が着岸し、荷役を行う岸壁や桟橋。

(高橋淳)

(カザフスタン)

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