米海洋大気庁、水産物輸入監視制度(SIMP)対象魚種拡大の規則案を撤回

(米国、日本)

ニューヨーク発

2023年11月22日

米国海洋大気庁(NOAA)は11月14日、水産物輸入監視制度(SIMP、注1)の対象魚種を拡大する規則案を撤回したと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。NOAAは2022年12月に、SIMPの対象を約1,100魚種(注2)から約1,670魚種へ拡大するほか、SIMPの要件を迂回するために使われる誤表示や代替品のリスクを最小化するなどの規則案を提案していた。拡大が提案された魚種の中には、日本から米国に輸出される魚種の中で輸出額1位のブリのほか、小型のマグロ類全て、ヒラマサ、カンパチ、イカ、コウイカ、タコ、ウナギなどが含まれていた。NOAAは規則案の提案から2023年3月までパブリックコメントを募集しており、今回の発表はパブリックコメントの結果を踏まえたもの。概要は次のとおり。

  1. SIMPは、違法・無報告・無規制(IUU)漁業や偽装水産物の米国市場への流入を防ぐため、米国が輸入する水産物の半数近くに報告・記録義務を課している。SIMPは、スクリーニングと抑止機能を提供することにより、米国経済、世界の食料安全保障、海洋資源の持続可能性を強化している。
  2. NOAA海洋漁業局(NMFS)は、SIMPを拡大する規則案を撤回する。規則案に対する一般からの広範な意見を踏まえた結果、代わりにSIMPの広範なレビューを行い、全体的なインパクトと効果を強化する方法を検討する。
  3. レビューの一環として、NMFSは、業界、NGO、他の連邦政府機関、議会、外国政府を含む利害関係者からSIMPに関する幅広い意見を求め、協働する。レビューを実施する間、SIMPは現行どおり運営される。つまり、SIMPの対象魚種や求められる情報は変わらない。

NMFS国際貿易商務部長のアレクサ・コール氏は「今回の規則案の撤回は、パブリックコメント期間中に寄せられた広範かつ多様な意見と、トレーサビリティの取り組みのインパクトと効果を強化するというわれわれの大きな目的に基づくものだ。SIMPはステークホルダーの期待に必ずしも十分に応えていないとのフィードバックを受けており、将来を見据え、プログラムの範囲、形式、全体的な目的に係るレビューを実施する適切な時期だ」と述べた。

SIMPの下で輸入業者が求められる情報は詳細・多岐にわたることから、SIMPの準拠には生産者を含めて流通過程の全ての関係者の協力がかかせない。一方で、求められる情報を準備できないとして、米国への輸出を諦めるケースもあるという。今回の決定により、ひとまず米国向けの水産物の輸出に関わる事業者に追加的な負担が課せられなくなったが、今後のSIMP強化の動向が注目される。

(注1)特定の水産物(13魚種および魚種グループ)を米国に輸入する場合、輸入事業者(Importer)を通じて漁獲情報や陸揚げ情報などを米国当局へ提供・報告することを義務付ける制度。詳しくはジェトロウェブサイト(輸入規制)を参照。

(注2)SIMPが対象とする13の魚種および魚種グループを全て魚種でカウントした数。

(北出輝雄)

(米国、日本)

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