10月の米小売売上高は前月比0.1%減と7カ月ぶりのマイナスに、識者は今後の消費減速を予測

(米国)

ニューヨーク発

2023年11月16日

米国商務省の速報PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(11月15日付)によると、10月の小売売上高(季節調整値)は前月比0.1%減の7,050億ドル(添付資料表参照)と、7カ月ぶりに伸びがマイナスに転じた。ブルームバーグがまとめた市場予想(0.3%減)ほど落ち込まなかったが、2023年4月以降プラスの伸びを維持していた個人消費の底堅さが弱まる可能性が示唆された。なお、9月の売上高は、前月比0.7%増(速報値)から0.9%増に上方修正された(2023年10月18日記事参照)。

自動車・同部品、家具などが押し下げ要因に

業種別にみると、前月の押し上げの主因となっていた自動車・同部品が前月比1.0%減の1,340億ドル(寄与度:マイナス0.18ポイント)と全体を最も押し下げた。次いで、その他が1.7%減の153億ドル(マイナス0.04ポイント)、家具が2.0%減の106億ドル(マイナス0.03ポイント)と減少に寄与した。一方、食品・飲料は0.6%増の830億ドル(0.08ポイント)、ヘルスケアは1.1%増の371億ドル(0.06ポイント)と増加した。耐久財や娯楽関係などの裁量的な支出が減少し、必需品の支出にシフトしている様子がうかがえる。

今回の結果について、識者からはこれまでの消費意欲が失われつつあり、今後は個人消費の勢いがさらに弱まるとの見方が示された。米国保険・金融サービスのネイションワイドのチーフエコノミスト、キャシー・ボストジャンシック氏は「10月の小売売上高は、所得の伸びの鈍化、余剰貯蓄の枯渇、厳しい与信管理などが、消費者の消費意欲と消費能力を制約しているというわれわれの見方を浮き彫りにした」と述べた(CNN11月15日)。また、金融サービス会社ジェフリーズ・ファイナンシャル・グループの米国エコノミスト、トーマス・サイモンズ氏は、年末の個人消費の見通しについて「第4四半期は遅い出足となり、10月に学生ローンの返済が再開されたこと、夏の終わりに比べて冬には体験型の消費機会が不足していることを考えると、今後2カ月は楽観視できない」との見方を示した(「ヤフー・ファイナンス」11月15日)。

また、民間調査会社コンファレンスボードが10月31日に発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした10月の消費者信頼感指数は102.6と、9月(104.3)より1.7ポイント減少し、5月以来(102.5)、5カ月ぶりの低水準となった(添付資料図参照)。内訳をみると、現在の雇用環境や経済状況を示す現況指数は143.1(9月:146.2)で3.1ポイント減少し、2022年11月(138.3)以来の低水準に落ち込んだ。また、6カ月先の景況見通しを示す期待指数は75.6(9月:76.4)で0.8ポイント減少し、景気後退のリスクが高まっていることが示された。

同社のチーフエコノミストのダナ・ピーターソン氏は、今回の結果について「消費者は引き続き物価全般、特に食料品とガソリンの価格上昇に頭を悩ませている。また、政治情勢や金利上昇に対する懸念のほか、最近の中東情勢の混乱を受けて、戦争や紛争に関する懸念も高まった」と述べた。

(樫葉さくら)

(米国)

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