米ニュージャージー州セミナー開催、知事らが進出先としての魅力やライフサイエンス分野の優位性を発信

(米国、日本)

調査部米州課

2023年10月18日

ジェトロは10月16日、米国ニュージャージー州のビジネス・投資環境を紹介するセミナーを東京で開催した(注1)。同州のフィル・マーフィー知事、ジェトロの石黒憲彦理事長が登壇し、米国でのビジネス展開に関心を持つ日本企業など約60人が参加した。

開会あいさつで石黒理事長は、ニューヨークといった大消費地に接する立地や米国東海岸最大の港湾を有するという利便性から、ニュージャージー州は多くの企業を引きつけていると述べた。また、日本企業の米国への進出にあたっては、州政府や経済開発公社との連携が重要だと説明した(注2)。

写真 ジェトロの石黒理事長(ジェトロ撮影)

ジェトロの石黒理事長(ジェトロ撮影)

基調講演を行ったマーフィー知事は、同州にとって日本は最大の対内直接投資国であり、両者は既に密接な関係にあるものの、「世界の不確実性が高まる中で、日本企業とのさらなる協業の機運が高まっている」と一層の関係性強化の重要性を強調した。その上で、米国のGDPの20%が同州を経由することから多くのビジネス機会があり、全米最高水準の公立学校制度や住みやすい生活環境が整っているとして、進出先としての魅力をビジネスと生活の両面で訴えた。

写真 ニュージャージー州のマーフィー知事(ジェトロ撮影)

ニュージャージー州のマーフィー知事(ジェトロ撮影)

続いて登壇したChoose New Jerseyのウェスリー・マシューズ社長兼最高経営責任者(CEO)と州政府経済開発機構(NJEDA)のティム・サリバンCEOは、同州のライフサイエンス分野の優位性として、世界の製薬最大手20社のうち14社が同州に拠点を構えていることを挙げた。さらに、プリンストン大学やラトガース大学をはじめとした全米有数の高等教育機関と連携している上、新たな研究施設であるNEST(Northeast Science & Technology Center)が2024年、HELIX(Health and Life Science Exchange)が2026年に稼働予定であるなど、エコシステムが発展し続けている点も強調した。また、140億ドル規模の税制優遇制度などを通じて中小企業やスタートアップの支援にも注力していると説明した。

中小企業やスタートアップの進出先としても適切

セミナーでは、日本企業による講演も行われた。同州で製剤事業を展開するシミックCMOの取締役最高執行責任者(COO)の濱浦健司氏は「競争はあるが、高度な教育を受けた人材を採用しやすい」と述べた。ヘルスケア大手でニュージャージー州に本社を置くジョンソン・エンド・ジョンソンから投資を受けて日本で医薬品事業を展開するヤンセンファーマの事業開発本部・事業開発・戦略部長の王麗氏は、「日本のパートナーと信頼関係を築くためには文化的な調和が重要だ」「ニュージャージー州には日本の主要企業による進出と協業の実績があるため、中小企業やスタートアップの最初の進出先として適切だ」とセミナー参加者にアドバイスを送った。

(注1)ニュージャージー州は米国北東部に位置し、ニューヨークやフィラデルフィアなどの大都市圏と接する。州人口は約926万(2022年7月推計)。州都はトレントンで、主要都市はニューアーク、ジャージーシティなど。

(注2)米国は各州政府が、独自に外資誘致インセンティブや立地を支援するプログラムを有する。ジェトロは、米国への進出や拠点拡大時、州政府などと連携した工場設立や研究開発拠点の設立の立地選定支援サービスを提供しているほか、ニュージャージー州を含む各州政府から日本企業へのセミナー動画などを公開している

(坂戸俊輔)

(米国、日本)

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