ADB、南アジア地域の2023年の経済成長率を5.4%、2024年を6.1%と予測

(バングラデシュ、インド、パキスタン、スリランカ)

調査部アジア大洋州課

2023年10月03日

アジア開発銀行(ADB)は9月30日、「2023年アジア経済見通し(ADO 9月版)」を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。南アジア地域(注1)の2023年のGDP成長率は、前回2023年4月の発表(2023年4月20日記事参照)より0.1ポイント低い5.4%に下方修正した。2024年の成長率予測は6.1%に据え置き、両年の予測は若干鈍化したもののほぼ横ばいだった。

ADBは同地域の牽引役とされるインドについて、堅調な国内消費と政府の大型設備投資によって成長が推進されると述べた一方で、輸出の鈍化が経済に与える影響や、不規則な降水パターンが農業生産を弱体化させる可能性を指摘し、2022/2023年度(2022年4月~2023年3月)のGDP成長率は6.3%に小幅下方修正した。2023/2024年度については、民間投資と鉱工業生産の増加を成長要因とし、6.7%との見通しを維持した。

バングラデシュ経済に関しては、輸出と国外就労者からの郷里送金の増加に伴う消費の増加や、政府投資の増加に伴って成長が維持されると分析し、2023/2024年度(2023年7月~2024年6月)の成長率予測を6.5%に据え置いた(2023年10月2日記事参照)。

パキスタンは、経済改革と経済政策の継続的実施、洪水による供給ショックからの回復、外部要因の改善を前提とし、2023/2024年度(2023年7月~2024年6月)の成長率は、4月の予測を0.1ポイント下回る1.9%とした。

スリランカについては、2023年(暦年)は不況が継続するものの、供給状況の改善や外貨準備高の増加、IMFと合意したプログラムの実施(2023年3月22日記事参照)を背景に、2024年の緩やかな回復を見込み、1.3%を据え置いた。

南アジア地域の2023年のインフレ率は8.6%(前回4月は8.1%)、2024年は6.6%(同5.8%)に予測を上方修正したものの、パキスタンとスリランカを除く各国の見通しは4月時から大きな変更は見られなかった。29.2%と突出して高い予測結果となったパキスタンは、供給不足や継続的な通貨安、輸入規制、新型コロナウイルス感染拡大の影響からの回復のための財政刺激策による食品価格の上昇などが反映された。スリランカの2023年のインフレ率は、需要の低迷から前回4月予測の24.6%より大幅に低下し、2024年には1桁台になると予測している(2023年8月17日記事参照)。

ADBは南アジアが直面する課題として、異常気象による気候変動リスク、ロシアのウクライナ軍事侵攻の影響が及ぼすエネルギーと食糧安全保障によるインフレ圧力の激化や、政策改革実施の遅れなどを挙げた。

(注1)南アジア地域はアフガニスタン、バングラデシュ、ブータン、インド、モルディブ、ネパール、パキスタン、スリランカを意味する。

(注2)国内情勢が不透明なアフガニスタンについては、信頼できるデータ不足のため、予測は困難とした。

(寺島かほる)

(バングラデシュ、インド、パキスタン、スリランカ)

ビジネス短信 d3b17b1296a54b13