ADB、南アジア地域の2023年と2024年の経済成長率を5.5%、6.1%と予測
(アフガニスタン、バングラデシュ、ブータン、インド、モルディブ、ネパール、パキスタン、スリランカ)
アジア大洋州課
2023年04月20日
アジア開発銀行(ADB)は4月6日、「2023年版アジア経済見通し 2023年4月版」を発表した。南アジア地域(注1)の2023年の実質GDP成長率は、前回2022年12月の発表(2022年12月28日記事参照)より0.8ポイント低い5.5%に下方修正し、2024年の成長率を6.1%と見通した。両年の予測は、46カ国・地域からなる、アジア新興国・地域の2023年および2024年の成長率4.8%を上回っている(2023年4月12日記事参照)。
ADBによると、南アジアは力強い成長を遂げるものの、地域内で大きく異なる点が指摘された。南アジアの牽引役と目されるインドについては、2023年は6.4%、2024年は6.7%の成長を予測。アジア新興国・地域の成長に対するインドの貢献度は、2015~2019年では平均22%だったが、2023年は25%、2024年には27%に上昇すると見通した。インドの急成長の背景には、健全な国内消費が反映されており、2023年2月の連邦予算における減税・免税措置によってさらに、消費は促進されることが見込まれる。また、輸出依存度は限定的なため、先進諸国の経済減速の影響を受けにくいと述べている。
バングラデシュについては、先進国の需要減退、政府による金融引き締め政策、コモディティー価格の高止まりにより、2023年の成長率は減速するとし、5.3%に引き下げた(2023年4月10日記事参照)。モルディブ(7.1%、2023年)やネパール(4.1%、同)では、観光業の回復が引き続き両国の成長を支える。ブータン(4.6%、同)やネパールは、水力発電の生産量増加が成長に寄与する。一方、パキスタン(0.6%、同)およびスリランカ(マイナス3.0%、同)の予測には、両国の不安定かつ深刻な経済状況が映し出された(注2)。
南アジアの2023年のインフレ率は8.1%と2022年の8.2%から0.1ポイント減で、2024年は5.8%と依然として高止まりすると見込まれている。その理由として、燃料・食料・その他コモディティー価格の世界的な高騰や財政・金融引き締め政策などの影響による、とADBは説明した。同地域の中でも、2023年のパキスタン(27.5%)およびスリランカ(24.6%)は突出して高い予測結果となった。
(注1)南アジアはアフガニスタン、バングラデシュ、ブータン、インド、モルディブ、ネパール、パキスタン、スリランカを意味する。
(注2)国内情勢が不透明なアフガニスタンについては、予測は行われていない。
(寺島かほる)
(アフガニスタン、バングラデシュ、ブータン、インド、モルディブ、ネパール、パキスタン、スリランカ)
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