米下院、トランプ前大統領が支持するジョンソン議員(共和党)を新議長に選出
(米国)
ニューヨーク発
2023年10月26日
米国連邦議会下院は10月25日、空席だった議長職に、ルイジアナ州選出の共和党議員のマイク・ジョンソン氏を賛成220、反対209票、棄権4票の賛成多数で選出した。ケビン・マッカーシー前議長(共和党、カリフォルニア州)が10月3日に罷免されて(2023年10月4日記事参照)から、3週間以上続いた下院議長の空席がようやく解消された。
ジョンソン新議長は憲法を専門とする弁護士出身で、ルイジアナ州議会議員の後、2017年から4期連続で同州選出の連邦下院議員を務めている。同氏は社会的保守派とみられており、ドナルド・トランプ前大統領にも近い人物とされる。トランプ氏が弾劾訴追を受けた際の弁護団の一員だったほか、2020年の大統領選挙時には、激戦州でのジョー・バイデン大統領の勝利認定を阻止するための訴訟を後押しした。トランプ氏も自身のSNSでジョンソン氏への支持を明らかにしていた。下院の現在の党派構成は、共和党221議員、民主党212議員、空席2議席で、共和党が多数となっており、今回の下院議長選出の投票もほぼ党派に沿って賛否が分かれたかたちだ。
下院の民主党トップのハキーム・ジェフリーズ議員(ニューヨーク州)をはじめ民主党議員は早くも、ジョンソン氏の議長選出を警戒する声を上げている。ジェフリーズ氏は、これまでのジョンソン氏の実績を見ると、「過激な右寄り思想」と警戒感を示した。ただし、民主党は超党派で課題を解決する準備ができており、ジョンソン氏もそうした姿勢を示せば協働できるとした。連邦議会の最優先事項である2024年度の連邦政府予算法案成立に向けては、下院民主党は上院民主党とは当然のこと、上院共和党とも合意を形成できており、下院共和党のMAGA(注)過激派だけが孤立していると批判し、歩み寄りを求めた。議会は9月末に11月17日までのつなぎ予算を成立させており、それまでに正式な予算法案、もしくは、さらなるつなぎ予算案を可決しなければ、政府閉鎖に至ることになる(2023年10月3日記事参照)。ジョンソン氏もその重要性を認識しており、議長選出後に「協議を重ねて議会の合意を形成していく」と発言している(ブルームバーグ10月25日)。実質的期限となる11月17日までに事態を打開できるか、新議長の手腕が注目される。
(注)MAGAは、Make America Great Again(米国を再び偉大に)の略。元はドナルド・トランプ前大統領の選挙キャンペーンのスローガンだが、今では民主党支持者らがトランプ氏と共和党の同氏支持者を批判的に表現する際に用いられることが多い。
(磯部真一)
(米国)
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