米新興AI企業アンソロピック、4億5,000万ドル調達、オープンAIに次ぐ年内2番目の規模

(米国)

ニューヨーク発

2023年05月30日

生成人工知能(AI)の開発を手がける米国スタートアップのアンソロピックは5月23日、信頼性の高いAI製品の開発を強化するための資金として4億5,000万ドルを調達したと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。これにより、同社の資金調達総額は10億ドル近くになった。今回の資金調達は、AI企業の中では、対話型AI「ChatGPT」の開発を手掛けるオープンAI(1月に100億ドルを調達)に次ぐ2023年内2番目の規模となる。同社の評価額は公表されていないが、各種情報ソースによると、50億ドル近くと推定されている。

今回の資金調達ラウンドでは、ツイッターやビジネス向けチャットツールのスラックなどに出資するスパークキャピタルが先導し、グーグルやセールスフォースなども参画した。資金調達を受けて、同社のダリオ・アモデイ最高経営責任者(CEO)は「これらの大手投資家やテクノロジー企業が安全性を最前線に置くAI研究と製品という当社の使命をサポートしてくれることに喜びを感じている。われわれが構築しているシステムは、現在と将来にわたって企業や消費者に良い影響を与えることができる、信頼性の高いAIサービスを提供するように設計されている」と述べている。

アンソロピックは、オープンAIで研究部門のバイスプレジデントを務めていたアモデイ氏らによって2021年に設立された。同社が2023年3月に発表したAIチャットボットの「クロード」は、文書の要約や作成やコーディング、特定のトピックに関する質問への回答など、さまざまなタスクを実行するように指示することができる。この点では「ChatGPT」と似た機能を持つが、同社は「クロード」について「有害なアウトプットを生み出す可能性が低い」「会話がしやすい」「操作性にも優れている」といった特徴を挙げている(テッククランチ5月23日)。

アンソロピックによると、同社では「憲法AI(Constitutional AI)」と呼ばれる独自のAIトレーニング技術を採用している。同システムでは、基本的人権の尊重を定めた世界人権宣言やAI研究所などが提案した原則など、アウトプットを判断するために一連の原則を用いているという。高度なレベルでは、モデルがこれらに記載された規範的な行動を取るように誘導する。これにより、有害または差別的なアウトプットを避け、人間が違法または非倫理的な活動を手助けすることを回避し、広範に役立つ誠実で無害なAIシステムを構築する上で支えとなっているとしている。

アンソロピックは、2023年5月にホワイトハウスで行われたカマラ・ハリス副大統領らと責任あるAI開発について議論する会合に招待された1社だった(2023年5月8日記事参照)。ハリス副大統領は同会合に参加したグーグルの親会社アルファベットやマイクロソフト、オープンAIを含む4社に対し、「民間企業には、自社製品の安全・安心を確保する倫理的、道徳的、法的責任がある」とし、生成AI開発を先導するトップ4社に、利用者に配慮した研究開発を行うよう要請した(「ニューヨーク・タイムズ」紙電子版5月4日)。

(樫葉さくら)

(米国)

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