ロシア、日本からの水産物輸入を実質禁止に

(ロシア、日本)

調査部欧州課

2023年10月18日

ロシアの連邦動植物検疫局(ロスセリホズナドゾル)は10月16日、日本からの水産物の輸入を一時的に制限すると発表した。中国と歩調を合わせた措置としていることから、実質的な輸入禁止とみられる。期間については明示されておらず、発表では「水産物の安全性が確認でき、かつユーラシア経済連合(EAEU)の基準に合致するとの完全な情報が日本側から提供され、その情報のロシア側専門家による分析が完了するまで」としている。

東京電力福島第1原子力発電所のALPS処理水の放出直後は比較的冷静な反応を見せていたロシア側当局だったが(2023年8月29日記事参照)、9月にロスセリホズナドゾルが中国税関総署との定期協議を行った後、10月16日を期限に日本側の関係当局に、輸出水産物に対するトリチウムを含む残留放射物質計測方法につき開示するよう求めるなど、態度を変化させていた。

日本からの生鮮・冷凍水産物を含む日本食材のインポーターのトヨストレードの関係者は、ジェトロのインタビュー(10月17日)に対し、「ロスセリホズナドゾルの通達では15日までに船積みした貨物であれば輸入できるように読める。ただし、現場にまで通達が周知されているかが心配。まもなく到着する貨物があるので、結果を注視している」と語る。

ロスセリホズナドゾルによると、ロシアによる日本からの水産物輸入は2022年に190トン、2023年の輸入量も9月22日時点で118トンと少量にとどまる。ロシアの水産物輸入総量に占める割合は1%未満だ(イズベスチヤ10月16日)。このことから、ロシア国内の専門家には、国内市場への影響はほとんどないとの見方が強い。ロシア水産加工者連盟のアレクサンドル・パニン会長は「レストランやサンマ加工業者に一部影響が出る可能性はあるが、(一般の魚は)中国のほか、タイやチュニジアなどからの代替も可能だ」と指摘する(ロシア新聞10月16日)。

その一方で、本マグロのような高級品はほぼ日本からしか入らないので、ロシアで拡大してきたアッパーミドルや高級日本食レストランへの影響を懸念する声もある。水産物の輸入業者は「これらの店舗に通う客は舌も肥えており、質が低いものに変更すると店から離れてしまう可能性がある」という。

(欧州課)

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