湾岸協力会議(GCC)とパキスタンが暫定FTAに署名
(サウジアラビア、アラブ首長国連邦、湾岸協力会議(GCC)、パキスタン)
リヤド発
2023年10月06日
サウジアラビアを含む湾岸協力会議(GCC)は9月28日、パキスタンとの間で暫定的な自由貿易協定(FTA)に署名した(注1)〔9月29日付サウジアラビア国営通信(SPA)〕。同協定は、物品関税の撤廃・削減のほか、サービス市場アクセス、投資の奨励・保護により、両国・地域間の物品・サービス双方の市場アクセスや投資を促進することを目的としている。協定文書は14章で構成されており、物品とサービスの市場アクセス、投資、電子商取引、税関手続き(貿易円滑化)、紛争解決、競争政策、貿易救済、知的財産、中小企業などを含む(注2)(10月1日付外貿易総局ウェブサイト)。
リヤドのGCC本部で行われた署名式で、GCCのジャセム・モハメド・アール・ブダイウィ事務総長は「GCCとパキスタンとの間のFTAは、各国や国際ブロックとの貿易関係や経済協力の強化の重要性を認識したものだ」と述べた。また、「GCC諸国が他国との自由貿易交渉を進めており、域内および国際的に加盟国の貿易・経済協力の展望を開き、強化することを目指している」と強調した。
また、サウジアラビアのマジッド・ビン・アブドゥッラー・アール・カサビ商業相兼対外貿易総局議長は「今回の調印は、地域間貿易の強化、GCC諸国とパキスタンとの経済協力の強化、あらゆる障害の除去に貢献する」と述べた。
2008年に交渉中断後、2022年に交渉を再開
GCCとパキスタンは2004年8月に経済協力に関する枠組み協定を締結した後、2006年にFTA交渉を開始。しかし、パキスタン側が関税撤廃を含む協定締結に積極的である一方、GCC諸国の間では安価なパキスタン産品・サービスの流入を警戒する動きが見られ、2008年9月以降、交渉が中断していた。その後、2022年6月に交渉が再開し、今回の発表にこぎつけた。
既にGCC6カ国を含む大アラブ自由貿易地域(GAFTA)が発効しているほか、GCCは、シンガポール、欧州自由貿易連合(EFTA)との間で自由貿易協定(FTA)を発効している。日本も2009年以来、GCCとの間で交渉が中断していたが、2023年7月の岸田文雄首相のサウジアラビア来訪時に交渉再開を発表した(2023年7月21日記事参照)。GCCは、EU、英国、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、インド、トルコとも交渉中だ。
(注1)FTAは締約国の署名後、各国の国内法に基づく批准続きが行なわれた後に、発効される。10月4日時点で、発効要件、時期については発表されていない。
(注2)10月4日時点で、両国・地域から協定文書は公表されていない。
(秋山士郎)
(サウジアラビア、アラブ首長国連邦、湾岸協力会議(GCC)、パキスタン)
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