米国との国境検査所一時閉鎖で甚大な被害、対米輸出貨物のコストが上昇

(メキシコ、米国)

メキシコ発

2023年10月02日

メキシコ経営者連合会(COPARMEX)は9月21日のプレスリリースで、メキシコ連邦政府、外務省、大蔵公債省、移民局に対し、チワワ州、コアウイラ州、ヌエボレオン州、タマウリパス州の輸出入企業に甚大な被害を与えている米国テキサス州における検査所の一時閉鎖について、必要な措置を講じることを要求する声明を発表した。

米国側は、米国への移民を希望する大多数がホームレス化したため、強盗や破壊行為などによる国境周辺の急激な治安の悪化を懸念し、一部国境税関の貨物検査所を閉鎖する措置を導入している。チワワ州シウダ・フアレスだけでも1万2,000人の移民希望者が、メキシコを経由して米国に渡るために押し寄せた。テキサス州政府は2023年5月から、トラック貨物に紛れて米国に移民が不法入国するのを防ぐ目的として、トラック輸送貨物に対する検査を導入しており(2023年5月17日記事参照)、貨物輸送の遅れが生じていた。今回の検査所の一時閉鎖により、メキシコから米国への輸出に関連する企業に甚大な被害が出ている。

全国貨物運輸協会(CANACAR)は、9月18~23日における国境検査所の一時閉鎖により、約9,000台のトラックが停留し、約12億1,500万ドルのメキシコからの輸出が停止したと発表した。マヌエル・ソテロCANACAR北部副会長は「医薬品、自動車、医療、エレクトロニクスの業界に最も影響があり、チワワ州の企業では代替手段として、輸送コストの3倍増を見積もり、長距離輸送を行うか航空輸送を行っている」と指摘した(「レフォルマ」紙9月26日)。

専門家はUSMCA違反の可能性を指摘

米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)首席交渉官だったケネス・スミス氏は「不法移民の検査のために税関を閉鎖することは国境に弊害をもたらす。USMCAでは、市場へのアクセスを保証しているが、米国連邦法では同検査が義務付けておらず、米国政府が同検査の実施を決定した場合、この検査は不当で貿易における技術的障害として認識される。その意味で、メキシコ政府はUSMCAにおける貿易の違反を主張できる」と示唆した。また、「不当な検査による税関閉鎖によって、メキシコは競争力を失い、メキシコに進出を検討している企業にとって、メキシコの魅力が低下する」と述べ、近年のニアショアリング(生産拠点を消費地の近隣国に移転する)による、対内直接投資が減少する恐れがあることを懸念した(「レフォルマ」紙9月26日)。

(阿部眞弘)

(メキシコ、米国)

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