メキシコ、テキサス州政府による国境貨物検査の即時撤廃を要求

(メキシコ、米国)

メキシコ発

2023年05月17日

メキシコ経済省は5月15日、米国テキサス州ブラウンズビルとメキシコのタマウリパス州マタモロスの国境における、メキシコからのトラック輸送貨物に対する検査の即時撤廃を求める声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますをウェブサイト上で公開した。同貨物検査は、米国でトランプ前政権時から導入されていた国境措置「タイトル42」(注)が5月11日に終了する(2023年5月11日記事参照)ことを視野に入れ、中南米などの移民が米国との国境に殺到した状況を受けて、テキサス州政府が導入したもの。トラック貨物に紛れて、米国に移民が不法入国するのを防ぐ目的。テキサス州のグレッグ・アボット知事は、2022年4月にも同様の国境措置を導入し、メキシコ政府の批判を招いていた。

経済省はプレスリリースの中で、「反メキシコ感情に根差したもので、メキシコとテキサスの間の社会的・文化的・経済的統合に相反する」と批判。メキシコはテキサス州にとって主要な貿易相手であり、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の恩恵により、両国間で自動車産業、電子製品、炭化水素資源(シェールガス)などの重要なサプライチェーンが構築され、テキサスとメキシコの貿易額は年間2,310億ドルに及ぶという。今回の貨物検査により、貨物の通関に8~27時間の遅延が生じ、数百万ドルに及ぶ損害を両国にもたらしているとし、最終的には米国の消費者がそのコストを被ることになるため、国境の早期正常化が全ての関係者にとって望ましいと主張している。

経済省によると、既に米通商代表部(USTR)との間で解決に向けた建設的な対話を開始している。5月12日には経済省のアレハンドロ・エンシナス通商担当次官とUSTRのジェイミー・ホワイト次席代表の間でビデオ会議がもたれ、同措置はUSMCAに反するというメキシコの懸念が伝えられた。メキシコ政府は、USMCAの貿易円滑化委員会に同問題を提起する構えだ。

輸出貨物の63%を占めるトラック輸送、テキサスとの国境が両国間陸上貨物の7割以上を占める

全国貨物自動車輸送会議所(CANACAR)によると、メキシコの輸出貨物の63%、輸入貨物の47%が自動車輸送によるもの。今回問題となったマタモロスの国境税関は、2022年に19万2,482回の通関を行った国内7番目の陸路国境だが、1位のヌエボラレド(159万7,109回)、3位のシウダ・フアレス(61万4,298回)などテキサス州との国境全11カ所を合計すると、両国間の陸路通関の73.3%を占める。

(注)合衆国法典(USC)第42章は、行政府に対して、入国者を経由した感染症の拡大を防止するため、移民の入国を制限する権限を与えている。トランプ政権時の2020年3月に新型コロナウイルス感染拡大を理由に発動され、亡命申請者を米国内に滞在させず、即時に本国へ強制送還する根拠となった。

(中畑貴雄)

(メキシコ、米国)

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