日本人観光客などのビザ費用免除へ、観光客拡大に期待

(スリランカ)

コロンボ発

2023年10月27日

スリランカ政府は10月23日、日本、中国、インド、ロシア、タイ、インドネシア、マレーシアからの観光客に対して、2024年3月31日までビザ(査証)の費用を無料にする閣議決定を行った。今回の決定は、2019年4月の同時爆破テロ、2020年の新型コロナウイルス感染拡大、2022年の経済危機で落ち込んだ観光業の回復を図ることが狙いだ(2022年12月14日記事参照)。加えて、世界遺産や史跡を対象としたパッケージチケットの発行や、観光用鉄道チケットの空港またはオンラインでの購入も認めた。スリランカへの2022年の外国人観光客数は71万9,978人、2023年1月から9月までは101万6,256人と増加傾向にあり、政府は外国人観光客を2026年までに年間500万人に増やすことを目指している。

観光ビザ費用の無料化措置に対して、コロンボ北部のネゴンボ郊外のシードゥワで旅行代理店を営むスリーエコ・ホリデーズ(Srieko Holidays)代表取締役社長の山倉義典氏は「ビザが無料になる効果は大きいとみている。円安の影響で海外旅行に消極的になっている日本人観光客にとって魅力的なので、今後のスリランカへの旅行者の増加を期待している」と話した。

日本からの観光客は回復傾向に

現在、日本からスリランカへの観光客は回復傾向にある。2023年8月は2,604人で、新型コロナウイルス流行前の2019年8月の2,428人を上回った。山倉氏は「2023年4月以降、日本からの観光客数は回復している。2023年3月にIMFからスリランカへの金融支援が決定し(2023年3月14日記事参照)、スリランカの社会・経済状況が一定の安定を取り戻したと判断されたのだろう。加えて、新型コロナ禍の収束に伴い、日本国内での水際措置が2023年5月に緩和された影響も大きい」と語る。

一方で、日本以外からのスリランカへの観光客も持ち直している。コロンボでホテルを運営するグランベルホテル・コロンボ(Granbell Hotel Colombo)のコーディネーティング・オフィス・エグゼクティブの山本満月氏は「2023年4月から宿泊客は徐々に増えてきた。日本の夏休みと重なった8月や9月には過剰予約になりかねないほど宿泊客が多かった。10月後半現在、客室稼働率が80%程度で高く推移している。最近は中国、インドからの観光客が多い。また、宿泊客の30~40%程度はスリランカ国内が占めている。」と話す。

スリランカ国内の状況について、山本氏は「2023年4月からスリランカに駐在しているが、特に危険なことはなく、生活は平和だと感じている。また、2022年夏には深刻だった燃料不足も、現在の旅行客にとっては問題ないようだ(2023年9月6日記事参照)」と語る。他方、山倉氏は「燃料供給は確保されているものの、価格が高いため、旅行者への影響が大きい。加えて、イスラエル・パレスチナ武装勢力間の衝突(2023年10月10日記事参照)がスリランカ国内の燃料価格にどのような影響を与えるのか、国際情勢の動向を注視している」と指摘した。

写真 キャンディからナーヌオヤに向かう観光列車(ジェトロ撮影)

キャンディからナーヌオヤに向かう観光列車(ジェトロ撮影)

(大井裕貴)

(スリランカ)

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