バイデン米政権、ベネズエラの石油・ガス部門への制裁を6カ月限定で緩和

(米国、ベネズエラ)

ニューヨーク発

2023年10月20日

米国財務省は10月18日、ベネズエラの石油・ガス部門に科していた制裁を6カ月間停止すると発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

今回の一時停止は、ベネズエラでマドゥロ政権と主要野党連合「統一プラットフォーム」が2024年の大統領選挙に向けたロードマップで合意したことを受けての措置となる。合意については、米国務省も10月17日、EU、カナダ、英国とともに、この動きを歓迎する声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを出していた。米国はこれまで、数回にわたってベネズエラに対する制裁を強化してきた。直近で最も影響があったものとして、トランプ政権時の2019年にベネズエラ国営石油公社(PDVSA)を経済制裁の対象に指定した措置が挙げられる(2019年2月5日記事参照)。しかし、バイデン政権になってから、特にロシアによるウクライナ侵攻で原油価格が高騰して以降、米国は対ベネズエラ制裁を限定的に緩和する動きを見せていた(2022年11月28日記事参照)。

今回の制裁緩和措置は具体的に、(1)2024年4月18日までベネズエラ国営石油会社(PDVSA)が関わるものも含む同国の石油・ガス部門との取引を認める一般許可証(GL)44外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますの発行、(2)ベネズエラ国営金採掘公社ミネルベンとの取引を認めるGL43外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますの発行、(3)一部のベネズエラ国債とPDVSA発行の債券・株式の流通取引(二次取引)の解禁の3点となっている。期間制限のある(1)については、ベネズエラがロードマップで合意した事項を順守するとともに、不当に拘束した米国人やベネズエラの政治家の解放に応じた場合に限って、更新されるとしている。政権高官によると、いずれも11月末までに一定の進展が期待されている。また、米財務省は、マドゥロ政権側が合意内容を守らないような場合には、いつでも緩和措置の修正・撤廃の準備があるとしている。

バイデン政権の措置に対しては、一部の米連邦議員から厳しい批判が相次いでいる。アラスカ州選出のリサ・マコウスキ上院議員(共和党)は「環境的に問題のないアラスカでの資源開発を阻みながら、世界でも最悪の政治体制が権力を維持し、恐怖と腐敗を拡散できるよう甘く対応している」との声明を出している。バイデン政権は9月にアラスカ州での石油・ガス採掘のリース契約をキャンセルすると発表していた(2023年9月8日記事参照)。上院エネルギー・天然資源委員長を務める民主党のジョー・マンチン議員(ウェストバージニア州)も「この政権は、海洋石油・ガス開発リースの5カ年計画については過去最少のものを発表しながら、世界で最も汚れたエネルギー生産者であり、自国民を抑圧するベネズエラと向き合い、米国では許可しないエネルギー生産を彼らに許している」とやゆしている(2023年10月2日記事参照)。

(磯部真一)

(米国、ベネズエラ)

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