ジェトロ、ベトナムの青果物市場ウェビナーを開催

(ベトナム)

ホーチミン発

2023年10月11日

ジェトロは921日、「ベトナムの青果物市場の現状と輸出の可能性」と題するウェビナーを開催し、ベトナムが輸入を認めている日本の生果実3品目(ナシ、リンゴ、温州ミカン)を中心に、日本産青果物の普及に向けたポイントを説明した(注1)。講師は、ジェトロ・ホーチミン事務所の海外コーディネーター(農林水産・食品分野)で、ホーチミン市内で青果物販売店を営む荒島由也氏が務めた。

写真 ウェビナーの様子(ジェトロ撮影)

ウェビナーの様子(ジェトロ撮影)

ベトナムは1億人規模の人口で、1人当たりGDP4,000ドルを超える経済規模だが、荒島氏は「ベトナム小売市場は伝統的市場などトラディショナルトレード(TT)の比率が高い」と言及。日本産青果物を扱うモダントレード(MT)の市場はそこまで大きくなく、主に都市部の高価格帯商品を扱うスーパーマーケットなどで販売されていると説明した。

また、果物を使ったスイーツから、青果物やジュースの販売に業態転換した自社店舗での経験を踏まえ、荒島氏は「ベトナム人はフレッシュさや調理したてであることにこだわる」と話し、ベトナムにおける果物の消費シーンを紹介した。テト(旧正月)の贈答文化が根強く、例年、特別感の出せる輸入果物の詰め合わせが好まれていることも強調した。

日本産青果物普及の課題については、認知度の低さ(注2)と販売チャンネルが限定的なことを挙げた。競合となる他国産の青果物は年間を通じて地方都市でも流通しているのに対し、日本産は販売店と期間が限られるという。また、韓国産ナシを例に、ブランディングと商品管理、商品パッケージの重要性を解説した。韓国産ナシは品質保持のため、フルーツキャップ(緩衝材)だけでなく、帯のシールを貼ることで緩衝材が外れないよう工夫している。他国産との価格差を説明するための情報発信に加え、ベトナム人が果物を手に取る小売店での、いわゆる「ラストワンマイル」のパッケージの工夫が必要だと話した。

なお、本ウェビナーは、こちらのページから期間限定でオンデマンド配信を行っている。

写真 韓国産ナシ(左)の売り場での陳列の工夫(ジェトロ撮影)

韓国産ナシ(左)の売り場での陳列の工夫(ジェトロ撮影)

シェアの拡大に向けて、日本産青果物の情報発信を強化

一般社団法人日本青果物輸出促進協議会と日本食品海外プロモーションセンター(JFOODO、注3)は、テト(旧正月)のギフト商戦を見据えて、日本産青果物のプロモーションを実施する予定。その取り組みの一環として、日本産青果物のベトナム語版ウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを立ち上げた。今後は、SNSでの発信を開始するとともに、2024年1月中旬にメディア向けイベントを開催し、情報発信を強化していく計画だ。

(注1)日本産青果物の輸出解禁要請および進捗状況については、農林水産省のホームページ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますに掲載されている。

(注2)2022年にジェトロが実施した、日本産のナシと温州ミカンに関するアンケート調査によると、味は高評価も、ベトナムでの認知度やシェアの拡大に課題が見られた(2022年12月28日記事参照)。

(注3)JFOODOは、2017年4月に日本政府によって設立された日本産農林水産物・食品のブランド構築のためのプロモーション専門機関。JFOODOでは、プロモーションの実施に先立ち、市場調査の分析などに基づいたマーケティング戦略を策定し、その戦略に基づいて、現地で消費者向けのプロモーションを実施している。

(児玉良平)

(ベトナム)

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