ベトナム、ALPS処理水放出後も日本産食品販売への影響は限定的

(ベトナム)

ホーチミン発

2023年10月05日

東京電力福島第1原子力発電所のALPS処理水の海洋放出を受け、ジェトロはベトナムにおける日本産食品の輸入販売への影響について、現地の日本食レストランや卸売業者にヒアリングを行った。

ホーチミン市内の寿司(すし)レストランでは、ALPS処理水放出後に一部の客から産地に関する問い合わせや日本産以外の水産物を使用した料理に代えてほしいという要望が若干寄せられたという。また、他の日本食レストランでも、日本産水産物を使用した料理の提供を一時的に停止している店舗も見られる。一方、日本産食品を取り扱う卸売業者によると、販売状況は以前と変わっておらず、日本産品の取引に影響が出るような事例は現状ないという。

近年、ベトナムでは日本産農水産物・食品を取り扱う店舗が増加しており、店舗でのイベント開催やプロモーション実施に力を入れる事業者が多い(2023年9月25日記事参照)。ヒアリングを実施した日本食レストランや卸売業者でも、旬の日本産水産物を使用したプロモーションイベントの開催を予定するなど、ALPS処理水放出後も日本産水産物・食品の輸入販売に積極的な姿勢が見られる。

国際機関の判断を尊重する姿勢

放出開始後、10月3日時点で、ベトナム政府による公式声明は発表されていない。現地報道も中立の立場で、他国・地域での報道内容を引用するにとどまっている。

ALPS処理水放出前の状況としては、外務省のファム・トゥー・ハン報道官が「ベトナムは国際法、国際機関の規則に従った地域の平和と安定の維持、海洋環境・資源保護を支持している」と話していた(VOV7月6日)。また、科学技術省傘下の放射線・原子力安全庁のファム・バン・トアン副局長は「日本の海洋放出は国際原子力機関(IAEA)の評価に基づいた実施で、ベトナムの海洋に影響はない」と発言している(VOV8月23日)。

(新田和葉)

(ベトナム)

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