米アパラチア水素ハブ、バイデン政権の7つの水素ハブの1つに選定

(米国)

ニューヨーク発

2023年10月19日

米国バイデン政権が10月13日に発表した米国内7カ所の水素ハブ(2023年10月16日記事参照)の1つに、アパラチア水素ハブ(ARCH2:Appalachian Regional Clean Hydrogen Hub)が選定された。連邦政府からの支援額は最大9億2,500万ドル。

ウェストバージニア州、オハイオ州、ペンシルベニア州にまたがるアパラチア水素ハブでは、同地域で天然ガス生産・貯蔵・輸送インフラが整っていることや、エネルギー関連の労働力が充実していることなどの強みを生かし、ブルー水素(注)の生産・利用・輸送を軸としたプロジェクトを進める予定だ。最終需要からの二酸化炭素(CO2)排出量を毎年2,500万トン削減し、バイデン政権が掲げる2050年カーボンゼロ目標達成に貢献することを目指す。

本水素ハブは、独立系応用科学技術研究機関のバテル記念研究所が主導し、天然ガス生産会社のEQT、クリーンエナジー事業を得意とするGTIエナジー、エネルギー技術コンサルティング会社のアレゲニー・サイエンス&テクノロジー、TRCなどがプロジェクトの管理をサポートする。また、国立エネルギー技術研究所が支援するほか、地域のエネルギー企業など15社がパートナー企業として参加する。

なお、水素ハブの選定結果発表に先行して2023年4月に、ウェストバージニア州ミンゴ郡に年間216万トン規模の生産能力を持つアンモニア生産施設の建設が発表されている。同施設は石炭採掘場の跡地に建設が予定されており、同施設の開発主体によると、エネルギー転換が図られる中で雇用が失われつつあるエネルギーコミュニティーに2,000人分以上の新規雇用を創出する効果が期待されるという。アパラチア水素ハブのプロジェクト全体では、最大で、こうした水素生産建設で一時雇用を1万8,000人分、常時雇用を3,000人分創出したい考えだ。

本プロジェクトについて、連邦議会上院のエネルギー・天然資源委員会のジョー・マンチン委員長(民主党、ウェストバージニア州)は「選定されたことを光栄に思う。これはウェストバージニア州が米国における新たな水素の中心地となることを意味する。ウェストバージニア州は、高収入の雇用と新たな経済機会を携えながら、新たな水素市場を構築する最先端に立つことになるだろう」と歓迎するコメントを発している。

(注)天然ガスなどを改質することで生産し、その生産工程で排出されたCO2を回収し貯留または利用(CCS、CCUS)することで、CO2排出を抑えた水素のこと。

(加藤翔一)

(米国)

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