米メーン州の森林バイオ製品開発テックハブ、バイデン政権の31のテックハブの1つに選定
(米国)
ニューヨーク発
2023年10月25日
米国のバイデン政権が10月23日に発表した国内31カ所のテックハブ(2023年10月24日記事参照)の1つに、メーン州の「森林バイオ製品開発テックハブ(Forest Bioproducts Advanced Manufacturing Tech Hub)」が選定された。2段階から成るテックハブプログラム審査の1段階目を通過したことを意味する。これにより、同テックハブは、関係省庁が提供する各種支援への優先アクセスや、同プログラム審査の2段階目への応募が可能になった。2段階の審査を経て最終的に指定された5~10のハブには、それぞれ5,000万~7,500万ドルの資金が援助される。
同テックハブはメーン州工科大学が主体となり、環境に配慮した持続可能な製品を製造するための生物学的構成要素を抽出するプロセスを革新することで、森林をベースとしたバイオ製品の生産・製造の世界的リーダーになることを目指している。とりわけ、プラスチックや有毒化学物質を代替する天然ポリマーおよび製品の開発と普及を加速させ、同分野の米国のサプライチェーンの強靭(きょうじん)性強化に取り組むとしている。
同テックハブは、メーン州政府とメーン州工科大学によって提案され、同州を代表する30以上の高等教育機関や労働力組織、企業などの連携の下で結成されたコンソーシアムによって設立された。代表的な参画企業・団体はメーン大学、ザ・ルー・インスティテュート、パルプと紙の製造を中心に川上から川下までの木材産業を手掛けるサッピ、動物向けのヘルスケアサービスや水質管理を手掛けるとともに森林保全にも取り組んでいるアイデックス・ラボラトリーズなどだ。
メーン州は土地の9割近くが森林地帯で、豊富な森林資源を背景とした林産物は何世紀にもわたって同州の経済を牽引してきた。メーン州国際貿易センターによると、同州の林業は85億ドルの経済効果と3万3,500人の雇用を生んでいる。製材所を中心とした木材産業は現在もメーン州の農村経済の屋台骨となっているものの、パルプ材や製紙産業の衰退に伴い、バイオ燃料(注1)、マスティンバー(注2)、バイオ炭(注3)など、木材の新たな活用方法が模索されている。
今回の選定について、同州のジャネット・ミルズ知事(民主党)は声明を発表し、「メーン州の林産物部門は州の遺産の重要な部分で、われわれの経済の未来の礎でもある。今回の胸おどる選定は、メーン州が雇用を創出し、米国のサプライチェーンを強化し、気候変動に配慮した持続可能な製品開発と製造で世界的リーダーであることを世界に示すものだ」と歓迎した。
(注1)再生可能なバイオマス(生物資源)を原料とする代替燃料。
(注2)木材を積層・接着した大体積の木質集成材の総称。圧縮・張力強度が高く、品質が安定している。
(注3)木炭や竹炭などの生物資源を材料とした炭化物。土壌の保水性や透水性の向上、中和作用、水質の浄化といった土壌改良効果をもち、土壌添加剤としての活用が注目されている。
(樫葉さくら)
(米国)
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