「一帯一路」フォーラム内で、グローバルAIガバナンスイニシアチブ発表

(中国、米国)

武漢発

2023年10月25日

中国の習近平国家主席は10月18日、第3回「一帯一路」国際協力ハイレベルフォーラムの開幕式の基調演説の中で(2023年10月24日記事参照)、「グローバル人工知能(AI)ガバナンスイニシアチブ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」を発表した。習国家主席は同イニシアチブを通じて、各国との交流と対話の強化を希望しており、世界におけるAIの健全で秩序ある安全な発展を共に促進するとしている(「新華社」10月18日)。

同イニシアチブでは、AI技術の発展を「経済・社会の発展や人類文明の進歩に大きな影響を及ぼし、世界に莫大なチャンスをもたらす」と評価する一方、「予見し難いリスクと複雑な課題ももたらす」とも指摘した。また、AIの管理は全人類の運命に関わる、世界各国が直面する共通の問題とした上で、「対話と協力を通じてコンセンサスを形成しつつ、オープンで公正かつ効果的なメカニズムを構築する。人類の幸福のためにAI技術を推進し、人類運命共同体の構築に貢献すべき」と訴えている。

ほかにも、「他国にAI製品やサービスを提供する場合、他国の主権を尊重し、法律を厳守し、法的管轄権を受け入れるべきだ。AI技術を利用して世論を操作し、虚偽の情報を流布し、他国の内政、社会制度、社会秩序に干渉し、他国の主権を害することに反対する」など、AI技術が社会に及ぼす影響への懸念や、「他国のAIの発展を、イデオロギー的な線引きや、排他的なグループの構築で、悪意を持って妨害することに反対する。技術独占や一方的な強制措置を用いてAI開発を阻害し、悪意を持ってAIのグローバルサプライチェーンを切断することに反対する」といった内容も含まれている。

米国による対中半導体輸出管理強化への対抗策か

同イニシアチブは、米国が対中半導体輸出管理の強化(2023年10月18日記事参照)を発表した翌日に発表されたため、米国への対抗策という見方をする報道もある(注)。

上記に対し、中国商務部の報道官は「注視している」とした上で、「AI関連のチップと半導体製造装置の対中輸出規制がさらに強化され、輸出規制エンティティリストに多くの中国企業が追加された」と現状認識を述べ、「米国は国家安全保障の概念を絶えず一般化し、輸出管理措置を乱用し、一方的ないじめを続けている。中国はこれらの措置に強い不満を抱いており、断固反対する」と米国批判を展開した。

(注)10月17日に発表された対中半導体輸出管理規則の最終規則では、AIに使用されるチップが管理対象に含まれている。

(楢橋広基)

(中国、米国)

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