マクロン大統領、環境計画を発表、EV公的リース制度導入へ

(フランス)

パリ発

2023年10月04日

フランスのエマニュエル・マクロン大統領は9月25日、EUが定めた2030年の温室効果ガス排出目標(1990年比で55%削減)の達成に向け、具体的な政策指針となる「環境計画(planification écologique)」を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

「環境計画」は​、マクロン大統領が2022年の大統領選で気候変動問題への具体的な対応策として策定を公約していたもの。大統領は再選後、首相直轄組織として「環境計画総局(SGPE)」を立ち上げ、エコロジー移行・地域結束省とエネルギー移行省を軸に、「国家再建評議会(CNR)」を通じて協議を行っていた。

マクロン大統領は「環境計画」の主な政策措置として、まず、エネルギー消費量の化石燃料の比率を現在の60%から40%に引き下げる方針を確認した。具体的には、2027年からは石炭火力発電を全廃するほか、大型洋上風力発電所の建設計画については、2024年末までにプロジェクト入札を実施する。​

交通・輸送分野では、鉄道インフラ予算として7億ユーロを確保し、13のプロジェクトでRER(地域圏高速鉄道網)を地方都市に整備する。また、2027年までに国内で100万台以上の電気自動車(EV)を生産するほか、国内4カ所にバッテリー製造工場を整備し、2027年からバッテリー輸出を開始する(2023年6月5日記事参照)。​

さらに、国内のヒートポンプ製造部門を整備し、2027年までに100万台の国内生産を目指す。ガス給湯器からヒートポンプへの買い替えを奨励する制度を整備する。

大統領は「(全ての国民に)アクセス可能で公平な」環境政策を目指すとして、低所得世帯が月額100ユーロでEVを利用できる公的リース制度を早ければ11月にも導入するとした。省エネ改築支援についても、低所得世帯向けに拡充する方針を示した。

「環境計画」の発表を受け、9月27日発表の2024年政府予算案外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますでは、住宅の省エネ改築支援措置の強化(約50億ユーロ)やEVの公的リース制度の導入、EV補助金制度の適用条件の見直し(2023年9月25日記事参照)など、前年を70億ユーロ上回る400億ユーロの予算を環境政策に充てた。

なお、フランスの気候変動に関する国家戦略は、今回発表した「環境計画」と「生物多様性戦略」「気候変動適応計画」の3つの政策で構成する。「生物多様性戦略」は10月中に、「気候変動適応計画」は12月に発表される予定だ。

(山崎あき)

(フランス)

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