ショールーム型店舗提供のショーフィールズ、米連邦破産法第11章の適用を申請

(米国)

ニューヨーク発

2023年10月12日

米国で新興企業のブランド向けにショールーム型店舗を提供するショーフィールズ(本社:ニューヨーク州ニューヨーク市)は10月6日、米国連邦破産法第11章(Chapter 11、日本の民事再生法に相当)の適用を申請した。

2017年に創業したショーフィールズは実店舗を持たない新興企業のブランドなどに対し、6カ月単位の期間限定で店舗を提供するとともに、人材や在庫管理、顧客データの分析などを通じた運営業務の支援サービスも併せて提供している。小売業の保有する顧客データ、販売スキルやノウハウなどとテクノロジーを組み合わせて提供するビジネスモデルは「小売業のサービス化(Retail as a Service、RaaS)」と呼ばれ、同社はそのビジネスモデルを確立し、先駆け的な存在として注目を集めてきた。十分な資金やノウハウを持たない新興企業にとって自社店舗を開設するよりも便利で安価な方法で店舗を運営できる利点があると注目され(「モダン・リテール」9月27日)、新しい価値やビジネスを生み出し得る手段として期待されていた。

しかし、裁判所に提出した申し立て書PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)によると、同社は新型コロナウイルス感染拡大に伴うロックダウンなどによって店舗閉鎖を余儀なくされ、商品を販売する展示スペースを同社の会員企業に提供できなくなった。このため収益が大幅に減少し、経営悪化へとつながったことなどから、破産を申請することとなった。ショーフィールズは事業再編のための新たな資金を既に確保しており、今後は既に閉鎖した店舗の再開などを目指すのではなく、現在もある首都ワシントンやニューヨークのブルックリンの店舗に集中するとともに、事業の再拡大に向けては、欧州進出の可能性について検討を進めている(「リテール・ダイブ」10月9日)。同社は日本への進出も計画していたが、2022年に凍結されたと報じられている(「日本経済新聞」電子版5月10日)。

新型コロナ禍で困難に直面したRaaS関連企業はショーフィールズに限らない。2021年後半には、ショールーム型店舗を手掛けるネイキッド・リテールがニューヨークの店舗を閉鎖したほか、最新の電化製品を展示する体験型店舗の「ベータ(b8ta)」は地主との契約が成立せず、2022年に米国での事業を停止している(モダン・リテール9月27日)。

米国の破産申請データを提供するエピック・バンクラプシーによると、米国企業による米連邦破産法第11章の申請件数は2023年に入って増加しており、2023年1~9月期には前年同期比61%増の4,553件となった(2023年10月11日記事参照)。景気の先行き不透明感が増している中で、多くの企業が苦境に立たされ、経営破綻に陥る企業の数は今後も増える可能性がある。

(樫葉さくら)

(米国)

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