気候変動合同委員会、グリーン経済実現に向けた5つの行動計画発表
(マレーシア)
クアラルンプール発
2023年10月27日
マレーシアの気候変動合同委員会(JC3)は10月23日、金融業界がグリーン経済への移行を支援するための5つの行動計画を発表した(JC3プレスリリース)。JC3は、マレーシアの金融業界による気候変動対策への協調枠組みとして2019年に設立され、共同議長を務める中央銀行とマレーシア証券員会(SC)をはじめ、証券取引所(ブルサ・マレーシア)や外資系銀行も含め、21の金融機関で組織される。今回の行動計画は、同国の持続可能性に関する課題に対応し、気候変動対策に金融業界が果たすべき役割を再確認したものと位置づけられる。
5つの行動計画は官民協調を原則に、(1)工業団地の緑化、(2)ブルサ・マレーシアとの連携によるバリューチェーン緑化プログラム、(3)環境・社会・企業統治(ESG)向け融資、(4)ESGポータルサイト設立、(5)農業のグリーン経済化から成る。
(1)では、投資貿易産業省(MITI)とマレーシア投資開発庁(MIDA)、マレーシア標準工業研究所(SIRIM)が連携し、工業団地の管理や進出企業の運営を低炭素かつ持続可能な形態に移行させる。具体的には、廃棄物管理や再生可能エネルギーの利用、温室効果ガス(GHG)排出量の測定などを想定している。(2)では、上場企業のサプライチェーン内の中小企業に対し、能力構築などの支援を行う。(3)でも、主に中小企業を対象に、マレーシア信用保証公社(CGC)が金融機関18社と提携し、10億リンギ(約313億円、1リンギ=約31.3円)相当の融資を提供し、ESG関連事業への資金調達を円滑化する。JC3は同日、金融業界の支援に資するデータを収集した「2023年版気候データカタログ」も公表した。
マダニ経済政策の理念に基づき、官民連携による気候変動への対応目指す
中央銀行のアブドゥル・ラシード・ガフォール総裁は「気候変動リスクを緩和すべく、金融業界がイノベーションを推進しつつ、資金需要に対応する新たな金融構造を模索するに当たり、中銀は今後も適切な金融環境整備に努める。これには官民連携と革新的な金融構造が必要だ」と述べた(中央銀行プレスリリース)。
また、ニック・ナズミ天然資源・環境・気候変動相は「マダニ・マレーシアとマダニ経済政策(2023年8月2日記事参照)という現政権の統治精神そのものが『持続可能性』を核に据えている。現政権の設立以降、気候変動対策への貢献と経済構造改革の双方を追求するさまざまな措置を講じてきた」として、JC3行動計画が掲げる理念が政権の目指す方向性とも軌を一にしていることを強調した。「実際に、2024年度国家予算案(2023年10月23日記事参照)もマダニ経済政策に基づき、気候変動に対処する総合的な政策を盛り込んで、エネルギー移行ロードマップ(2023年9月4日記事参照)、新産業マスタープラン2030(2023年9月7日記事参照)、第12次マレーシア計画中間点検(2023年9月15日記事参照)といった他の政策を補完している」と、各政策間の関係性にも言及した。
(吾郷伊都子)
(マレーシア)
ビジネス短信 0dbe8ade460f6734