香港、5つのフィンテック分野に焦点を当てたロードマップを公表

(香港)

香港発

2023年09月04日

香港金融管理局(HKMA)は825日、新たな「フィンテック・プロモーション・ロードマップ」(以下、ロードマップ)を公表した(ロードマップの詳細についてはHKMAのウェブサイトPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)参照)。HKMAは、香港証券先物委員会や保険業監督局と協働し、ワールドクラスのフィンテックサービスを提供することで、香港の金融センターとしての地位強化を図る方針を掲げた。

ロードマップでは、(1)ウェルステック(注1)、(2)インシュアテック(注2)、(3)グリーンテックのフィンテック関連分野と、(4)人工知能(AI)、(5)分散台帳技術(DLT)(注3)のテクノロジー関連分野に焦点を当てた。

HKMAは、フィンテック2025戦略(注4)の一環で、銀行のフィンテック導入の現状と計画を把握することを目的とし、20226月に「テック・ベースライン評価(注5)」を完了。その調査結果によれば、広東・香港・マカオグレーターベイエリア(粤港澳大湾区)の発展によって、資産・投資運用へのニーズが増加し、地方銀行における上記(1)と(2)のテック導入率は2022年(20%)から2025年(40%)までに上昇する見込みという。(3)については、HKMAおよび金融機関のESG(環境・社会・ガバナンス)強化の方針(2023年4月21日記事参照)により、グリーンテックへの大きな需要が生まれ、2022年のグリーンテック導入から2025年までに倍増することが見込まれる。

また、(4)については、既にチャットボットで使用されているが、生成AI(ジェネレーティブAIともいう)の登場で、顧客の投資計画、保険契約の引き受け、金融ニュースやレポート作成などに幅広く使用される可能性があり、顧客に対しよりパーソナライズされたサポートやカスタマイズされた推奨商品や情報の提供、よりシームレスな顧客体験の実現が期待される。

5)については、クロスボーダー決済における仲介業者の関与を最小限に抑え、データ調整、転送、検証などによる遅延や過剰コストの削減が可能となり、金融取引の迅速化と効率化が期待される。

今後1年間、ロードマップの実施に向けて、フィンテック関係者による円卓会議、セミナーや研修および調査レポートの公開などの活動が予定されている。

(注1)財務計画、投資管理、ポートフォリオ分析、顧客コミュニケーションなどの分野での資産管理強化を図る科学技術。

(注2)顧客体験の向上や業務効率化を図る保険関連の科学技術。

(注3)中央決済機関を必要とせず、複数の台帳が取引の記録を共有する分散型データベースシステム。

(注4)金融セクターが、利用者に、公平・効率的な金融サービスを提供できるよう2025年までに科学技術を包括的に採用することを奨励した戦略。

(注5)銀行が現在および今後数年間で導入予定のフィンテックを評価するとともに、未開発のフィンテック領域や科学技術を認識し、HKMAが未対応分野に有効的な支援を行うことを目的としたもの。フィンテック2025戦略の1つ。

〔何樂晴(エスター・ホー)〕

(香港)

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