米商務省、CHIPSプラス法のガードレール条項の最終規則を公表

(米国)

ニューヨーク発

2023年09月25日

米国商務省は9月22日、CHIPSおよび科学法(CHIPSプラス法)に基づく半導体産業向けの資金援助プログラムにつき、受益者が順守すべき安全保障上のガードレール条項に関する最終規則を公表した。正式には9月25日付の官報で公示外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますされ、11月24日から有効となる。

商務省は3月に規則案を公表しており、利害関係者からパブリックコメントを募集していた(2023年3月22日記事参照)。最終規則はそれらコメントを慎重に検討したとしている。また、同盟・友好国政府からもインプットを得たとしている。プログラムを統括する国立標準技術研究所(NIST)のCHIPSプログラム室のプレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、最終規則は特に、規則案でも示していた(1)受益者が懸念国(注1)で半導体製造関連の実質的な拡張投資を10年間制限する条項(拡張ガードレール)と(2)受益者が懸念ある外国事業体と共同研究またはそれらへの技術ライセンシングを制限する条項(技術ガードレール)について、詳細を定めたとしている。これら条項への違反が発覚した場合、商務省は受益者から資金援助を引き揚げることができる。商務省は、最終規則で明確化した主要な点を次のとおり説明している。

(1)拡張ガードレール関連

  • 懸念国での先端的半導体施設拡張の制限にかかる基準の設定:最終規則では対象となる施設について、ウエハー生産施設も含まれることを明確にした。また、クリーンルーム(注2)も対象に含まれる。「実質的な拡張」の定義は規則案から変わらず、既存施設の製造能力を、5%を超える割合で増強することとなっている。
  • 懸念国でのレガシー半導体施設拡張の制限にかかる詳細を確定:既存の施設は原則ガードレール条項の対象外となるが、新たなクリーンルームや生産ラインの増設を行い、結果として製造能力が10%を超える割合で増強される場合は対象となる。新規の施設の場合は、同施設の生産の最低85%が、当該半導体が生産されている懸念国で消費される製品に組み込まれるのであれば対象外となる。

(2)技術ガードレール関連

  • 一定の半導体を国家安全保障に重要なものと分類:量子コンピューティングや高放射線下での使用、そのほかの軍事用途に使われるなど一定の用途で用いられる半導体をリスト化し「国家安全保障上の懸念を惹起(じゃっき)する技術」として懸念ある外国事業体との共同研究・技術供与の規制を適用する。
  • 懸念ある外国事業体との共同研究・技術供与の制限の詳細を確定:「懸念ある外国事業体」の定義(注3)は規則案時点からほぼ変更はないが、国際標準に関わるものや受益者がファウンドリーおよびパッケージングのサービスを利用できるようにするものなど、既存の事業運営に必要で国家安全保障に脅威を与えない活動は規制の対象外とする。

CHIPSプログラム室は同日にウェビナーを開催PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)し、要点を説明した。外国企業が資金援助プログラムの受益者となった場合、その「関連企業」が懸念国で規制に該当する活動に携わる場合が懸案となる。この点、(1)拡張ガードレールについては、当該関連企業の所有者(議決権持ち分所有者)の80%以上が受益者と同じである場合は、同関連企業にも適用されると説明された。(2)技術ガードレールは受益者のみが対象となる。CHIPSプログラムの最新情報はCHIPS.gov外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますから確認できるほか、CHIPSプログラム室は申請に関する質問をEメール(一般的質問の宛先はaskchips@chips.gov、申請関連の質問はapply@chips.gov)で受け付けている。

(注1)CHIPSプラス法によると、次のとおり定義されている。北朝鮮、中国、ロシア、イラン。また、商務長官が関係閣僚と協議の上、米国の安全保障または外交政策に有害となる活動に関与していると判断した国。

(注2)空気洗浄度が一定以上となった防塵室。

(注3)規則案では、連邦通信委員会が「2019年安全で信頼できる通信ネットワーク法」に基づき管理する「対象機器・サービスリスト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」に掲載の事業体も含まれるとしていたが、最終規則では削除されている。

(磯部真一)

(米国)

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