米政府、CHIPSプラス法の安保条項、投資税額控除の規則案を公表

(米国)

ニューヨーク発

2023年03月22日

米国商務省は3月21日、CHIPSおよび科学法(CHIPSプラス法)に基づく半導体産業向けの資金援助プログラムにつき、受益者が順守すべき安全保障上のガードレール条項に関する規則案を公表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。官報に公示後60日間パブリックコメントを募集し、2023年後半に最終規則を公示する。

商務省は、資金援助プログラムについて2月末に申請に関する概要を公表したが、ガードレール条項の詳細は後日公表するとしていた(2023年3月1日記事参照)。ジーナ・レモンド商務長官は「CHIPSプログラムは国家安全保障の根幹に関わる取り組みであり、ガードレール条項は悪意を持った人物や企業による、米国および同盟国に対して利用できる先端技術へのアクセスを阻止することを確かにする」と、その趣旨を強調している。CHIPSプラス法に基づく半導体産業向けの資金援助プログラムには元々、(1)受益者がプログラム資金を米国外で利用することを禁止、(2)受益者が懸念国での半導体製造関連投資を行うことを10年間制限、(3)受益者が懸念ある外国事業体と共同研究またはそれらへ技術ライセンスすることを制限するガードレール条項が定められている。今回の規則案はこれらの細則を提案するものとなっている。

例えば、(2)に関して法律では、受益者に対して資金を受領した日から10年間、懸念国(注1)における先端半導体製造施設に関する「重要な取引」や「実質的な拡張」を禁止するとしている。これらに対し規則案では、「重要な取引」は10万ドルを超えるもの(注2)、「実質的な拡張」は既存施設の製造能力を5%を超える割合で増強すること(注3)と定義した。懸念国におけるレガシー半導体の製造施設に関する投資についても、対象となる半導体の仕様を定めた上で、それらを製造する施設の能力を、10%を超える割合で増強する場合は禁止されるとした。さらに、新規建設の場合は同施設の生産の最低85%が、当該半導体が生産されている懸念国で消費される製品に組み込まれる必要があるとしている。(3)については例えば、「懸念ある外国事業体」について法律での定義に加えて、商務省が管理する「エンティティー・リスト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」、財務省が管理する「非・特別指定国民 中国軍事産業複合企業リスト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」、連邦通信委員会が「2019年安全で信頼できる通信ネットワーク法」に基づき管理する「対象機器・サービスリスト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」に掲載の事業体も含まれるとしている。

投資税額控除の規則案も公表

財務省と内国歳入庁(IRS)も同日、半導体関連投資に対する先端製造投資税額控除の規則案を公表した(財務省外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますIRS外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。正式には3月23日付の官報外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで公示され、60日間パブリックコメントを募集する。半導体または同製造装置の製造を目的とした施設にかかる投資額の25%が税額控除の対象となり、CHIPSプラス法が施行された2022年8月9日以降に建設が開始され、2022年12月31日以降に稼働した施設が対象となるとされている。また、こちらの規則案にも、そもそも懸念ある外国事業体は税額控除を申請できないことや、懸念国での「重要な取引」に関与した場合に税額控除を無効にするなど、商務省の規則案とも連動した安全保障上の細則案が含まれている。

(注1)北朝鮮、中国、ロシア、イラン。また商務長官が関係閣僚と協議の上、米国の安全保障または外交政策に有害となる活動に関与していると判断した国。

(注2)買収、合併、子会社への出資などの形態を含み、10年以内の累計額が10万ドルを超える場合も該当する。

(注3)10年以内の製造能力の増強の累計が5%を超える場合も該当する。

(磯部真一)

(米国)

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