ジェトロ、中国の営業秘密漏えい対策のセミナー開催

(中国、日本)

青島発

2023年09月21日

ジェトロは914日、中国の青島日本人会・商工会と共催で、リドラ法律事務所の章啓龍代表弁護士を講師に、営業秘密の漏えい防止に関する基本事項と実務対応と題したセミナーを開催した。約45人の進出日系企業関係者が参加した。

セミナーでは、営業秘密の定義、行政や司法による救済などの基礎知識のほか、設計、素材、配合方法などに関する技術情報、顧客名簿、特許と営業秘密の使い分け、営業秘密の漏えい防止に関する社内部署の役割分担など実務対応について説明し、従来の情報漏えい対策のほか、スマートフォンの普及、WeChatの活用、ジョブホッパーの存在といった中国社会の現状に照らした対策の制定が重要だと指摘した。

社内情報が漏えいした際に救済を受けるには営業秘密として法律上の要件を満たす必要がある。営業秘密だと思われやすい顧客名簿については、顧客名称、住所、連絡先のみを記載したリストは「公開経路から当該情報を取得できる」情報に該当するため、営業秘密との認定を受けられない可能性が高い。営業秘密として認められるには、顧客ニーズの特徴や嗜好(しこう)、取引情報など、当該情報を取得するために一定の人的、物的、経済的なコストと労力が必要となるものをリストに含めるなどの措置が必要との見解を示した。また、機密情報を管理する上で重要となる情報システムの面では、社内で専用ソフトウエアを導入するケースや、営業担当者本人と機密保持契約で同意を得た上で、会社名義で購入したスマートフォンを使用させ、企業WeChatやスマートフォンでのチャット履歴を不定期に監視するアプリを導入するケースもあるという。

最後に、一般人が知らない情報でも、必ずしも法律上の「営業秘密」に該当するとは限らず、法律上で認め得る秘密保持措置を講じていなければ、営業秘密に関する法律上の救済を求めることはできないと強調した。また、業務効率の維持または向上を言い訳に、情報漏えいリスクから目をそらすべきではないと述べた。

なお、ジェトロでは、進出日系企業の営業秘密漏えいを防ぐことを目的に、海外における営業秘密漏えい対策支援事業の募集を開始している。

(赤澤陽平)

(中国、日本)

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