米FRBのパウエル議長、金融政策の引き締め姿勢維持を強調、米ジャクソンホール会議

(米国)

ニューヨーク発

2023年08月28日

米国連邦準備制度理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長は8月25日、ジャクソンホール会議(注1)で「インフレの進展と今後の道筋」をテーマに講演外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。主な内容は次のとおり。

  • 現下のインフレに関して、「ピークから低下してきているものの、依然として物価安定目標の2%を上回っており、高すぎる水準にある」と評価。インフレ率低下のプロセスはまだ長い道のりがあると総括。
  • 個人消費支出物価指数(PCE)のうち、変動の大きいエネルギーと食料品を除いたコア指数について、2023年6月と7月(注2)に前月比減となったことを指摘し、「2カ月連続で低下しているものの、目標に向かって持続的に低下しているという確信を持つための始まりにすぎず、基調的なインフレがどこに落ち着くのかはまだわからない」と評価。

さらに、PCEの需要項目別に、財、住宅サービス、非住宅サービスについて、次のように言及した。

  • 財については、金融引き締めの効果と、需要および供給面での混乱が収まったことにより、特に耐久財で大幅にインフレが緩和していると評価。その例に自動車を挙げ、新型コロナウイルスのパンデミック初期の低金利、家計におけるサービス支出の減少、公共交通機関の利用を忌避する動きなどに伴って需要が急激に増加した一方、半導体不足によってその後供給が減少したことで価格が急激に上昇したとして、需給バランスの不均衡があったと述べた。それが最近では、パンデミックとその影響が薄れるにつれて供給制約が解消され、自動車ローンの上昇により需要が押し下げられ、インフレが緩和していると説明。こうしたことは、自動車だけでなく耐久財全体で起きており、今後も金融政策の効果が時間の経過とともにあらわれてくるだろうと予想した。
  • 住宅サービスについては、価格低下が遅れていた賃料も最近では低下しはじめていると評価。こうした伸びの鈍化は進行中だが、上振れリスクと下振れリスクについて引き続きデータを注視していくとした。
  • 非住宅サービスについては、最近の低下は心強いことであるとしつつも、(1)他のセクターとは異なりサプライチェーンの改善や金融引き締めの影響を受けにくいこと、(2)労働集約的な側面が強く、労働市場は依然として逼迫していること、から小幅の低下となっていると評価。このセクターでのさらなる改善が必要とした。

パウエル議長は、これまでのインフレ抑制に向けた金融政策の進捗をある程度評価しつつも、「パンデミックに起因する(需給の)の歪(ゆが)みがさらに緩和されることで、インフレについては引き続き下押し圧力がかかるものの、金融引き締めがますます重要な役割を果たす可能性が高い」とした。また、こうした認識の下、「適切であればさらに金利を引き上げる用意があり、インフレが持続的に低下していると確信できるまで政策を抑制的な水準に維持するつもりだ」と述べ、追加利上げの可能性を含めて総じて金融の引き締め姿勢の継続を示した。

(注1)ジャクソンホール会議は、毎年夏に開かれる、カンザスシティー地区連銀主催の経済政策シンポジウム。例年、ワイオミング州ジャクソンホールで開かれ、各国の中央銀行総裁やエコノミストが参加する。

(注2)2023年7月のPCEは8月31日に米国商務省WEBサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで公表の予定。

(加藤翔一)

(米国)

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