日本向けグリーン水素販売で、興和とアダニが合弁会社設立

(インド)

アーメダバード発

2023年09月27日

興和(本社:愛知県名古屋市)は9月15日、コーワ・ホールディングス・アジア(シンガポール)とインド新興財閥アダニ・グループの100%子会社であるアダニ・グローバル(シンガポール)との間で合弁会社(資本比率50:50)を設立すると発表した。同合弁会社は、今後インドでの生産が計画されているグリーン水素およびグリーン・アンモニアについて、主に日本での販売とマーケティングを行う。

インドでは、競争力が高いとされるグリーン水素、グリーン・アンモニアの生産に期待が高まっている。インド政府は2030年までに年間500万トンのグリーン水素生産目標を掲げ、2023年1月に「国家グリーン水素ミッション」を発表した(2023年6月9日付地域・分析レポート2023年8月24日地域・分析レポート参照)。これらの動きを受けて、興和は日印のカーボンニュートラル実現に向け、インドにおけるグリーン・アンモニア供給のバリューチェーン構築の最適化、およびグリーン肥料事業の最適化に関する事業化調査を経済産業省より受託した。同調査を通じ、(1)日本の石炭火力発電所でのインド産グリーン・アンモニア混焼利用までのバリューチェーン構築、(2)インド肥料業界のグリーン化に貢献すること、を目指している(興和プレスリリース9月15日)。

一方、アダニ・グループのグリーン水素事業を管轄するアダニ・ニュー・インダストリーズ(ANIL)は、グリーン水素およびその誘導体(注)を大規模に生産するエンド・ツー・エンドのソリューションを開発している。ANIL初の年産100万トンのグリーン水素プロジェクトは、グジャラート(GJ)州で段階的に実施されており、初期段階として2027年度までに生産が開始される予定だ。市況に鑑み、ANILは今後10年間で、約500億ドルを投資し、グリーン水素の生産能力を最大年産300万トンにまで拡大することを目指している。

さらにANILは、(1)サプライチェーン製品の製造(例:太陽光ポリシリコン、インゴット、ウエハー、セル&モジュール、風力タービン発電機、電解槽および付属品)、(2)グリーン水素の製造、(3)川下誘導体の製造(グリーン・アンモニア、グリーン・メタノール、持続可能な航空燃料など)の、3事業を統合した水素エコシステム開発に重点を置いている。これらの事業に、アダニ・グループが蓄積してきた、再生可能エネルギー関連装置の製造、大規模発電プロジェクトや送電網インフラの構築、プロジェクト遂行能力などを組み合わせれば、インドでのグリーン水素エコシステム構築において、大きな競争優位性が発揮できるとしている。また、GJ州西部のムンドラ港は、世界的なサプライチェーンに位置付けられており、特に極低温製品を取り扱うための港湾施設が利用可能なため、グリーン水素とその誘導体の輸出港としての優位性があると指摘している(アダニ社プレスリリース9月14日)。

(注)誘導体:有機化学の用語の1つで、ある有機化合物を母体として考えたとき、母体の構造や性質を大幅に変えない程度の改変がなされた化合物のこと。水素の場合、メタノールやアンモニアなどが該当する。

(古川毅彦)

(インド)

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