バイデン米政権が新たな対ロ制裁、エネルギー分野などが対象

(米国、ロシア、ウクライナ)

ニューヨーク発

2023年09月15日

米国の国務省と財務省は9月14日、ウクライナへの侵攻を続けるロシアに対する新たな制裁措置を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。合わせて150を超える個人・事業体が金融制裁の対象である「特別指定国民(SDN)」に指定された。

国務省は主に、ロシアにおけるエネルギー生産・輸出、金属鉱物分野などに関連する70以上の事業体・個人をSDNに指定外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。指定対象の中には、日本企業はじめ中国、フランス企業も参画する、ロシア北極圏での液化天然ガス(LNG)開発事業「アークティックLNG2」に建設やエンジニアリングサービスを提供しているロシア企業が複数含まれている。金属鉱物分野では、銅の生産でロシア3位のRCCとその子会社などが含まれている。国務省はこれらを制裁対象とすることで、ロシアの将来的な資金源を断つことが狙いだとしている。9月13日には、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領と北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党総書記がロシア極東で会談を行い、北朝鮮からロシアへの武器供与についても協議した可能性が報道されている(ロイター9月13日)。国務省はこの点には触れていないものの、ロシアの民間軍事会社ワグネル・グループに供給するために、北朝鮮からロシアへの武器輸送に関わった個人をSDNに指定している。

財務省は主に、ロシアのエリート層や軍事関連産業、金融機関、ロシアに国外のハイテク製品を供給する事業体などを対象に約100の事業体・個人をSDNに指定外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。軍事関連産業では、巡航ミサイルや軍事輸送機、無人航空機向けのエンジン製造に関わるロシア企業が指定されている。また、主要国によるロシア向けの輸出管理を迂回するかたちでロシア国外のハイテク製品をロシアに輸出していたとして、フィンランドおよびトルコに拠点を置く事業体が指定されている。それらが取り扱っていた製品には、米国財務省と商務省が5月に特定したロシアの武器システムに利用される恐れが高い品目(2023年5月22日記事参照)のほか、無人航空機用カメラ、リチウムイオン電池、センサー、計測器などが含まれていた。SDNに指定された個人・事業体には、在米資産の凍結や、米国人(注1)との資金・物品・サービスの取引禁止が科される(注2)。

バイデン政権の対ロシア・ベラルーシ制裁については添付資料参照。

(注1)米国市民、米国永住者、米国の法律に基づく、もしくは司法権が及ぶ域内に存在する法人(外国支所も含む)、もしくは米国内に存在するあらゆる個人を指す。

(注2)SDNが直接または間接的に50%以上所有する事業体も当該制裁の対象となる。SDN指定を今回受けた企業などの詳細は財務省のウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで確認できる。ウクライナ情勢に関する財務省による制裁の全容は同省の「ロシア関連制裁」のポータルサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを参照。制裁対象に指定した個人・企業などについては、同省外国資産管理局(OFAC)のデータベース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますでCountry欄のRussiaを選択し、Searchをクリックすることで確認可能。

(磯部真一)

(米国、ロシア、ウクライナ)

ビジネス短信 5a279cb8bc383c89