バイデン米政権、G7諸国などと協調してロシアに追加制裁

(米国、ロシア、ウクライナ)

ニューヨーク発

2023年05月22日

米国のバイデン政権は5月19日、G7諸国などとの協調の下でウクライナへの侵攻を続けるロシアに対して新たな制裁措置を発動した。広島で開催されたG7首脳会合ではウクライナに関する共同声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますが発表され、協調してロシアへの制裁を継続することが明記された。今回の措置は、それを踏まえた動きとなる。

新たな制裁は主に、財務省と国務省による「特別指定国民(SDN)」(注1)の指定と、商務省による輸出管理の強化で構成されている。既存の制裁を迂回してロシアの戦争継続能力の維持に加担している個人や事業体が対象となっており、財務省は22の個人と104の事業体をSDNに指定外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますし、国務省も200以上の個人、事業体、船舶、航空機をSDNに指定外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。商務省は71の事業体を輸出管理規則(EAR)上のエンティティー・リスト(EL、注3)に追加外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。例えば、ロシアが軍産複合体を維持・発展させるために必要な外国製の半導体などを入手できないよう、同国最大のエンジニア企業オステック・グループをSDNに指定している。これはG7の共同声明で、G7諸国の技術をロシアに渡さないことが強調されたことを受けた措置となる。このほか、ロシアに拠点を置くハイテク製品の輸入業者や、航空機や船舶など輸送機器の製造業者、エネルギー・工業分野の事業体などがSDNに指定されたり、ELに掲載されたりしている。

また、ロシアが引き続き国際的な金融システムを利用して戦争を継続しているとして、同国に加担しているとされるアラブ首長国連邦(UAE)に本拠のあるプライベート・エクイティ・ファンドやスイス本拠の資産管理会社などがSDNに指定された。金融面ではさらに、財務省の金融犯罪取り締まりネットワーク(FinCEN)と商務省産業安全保障局(BIS)が共同で、金融機関に対してロシア向けの輸出管理違反となる取引に関与しないよう勧告を公表PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)した。その中では、特に注意すべき取引品目として、ロシアの武器システムに利用される恐れのある9品目(高優先度品目リスト)を6桁の関税分類番号(HSコード)で示されており(注4)、これらの指定に際してはEU、英国、日本と連携したとしている。ロシアが停戦に向けた動きを見せない限り、制裁強化の傾向は続いていくものとみられる。

なお、バイデン政権の対ロシア・ベラルーシ制裁については添付資料参照。

(注1)在米資産の凍結や米国人(注2)との資金・物品・サービスの取引禁止という制裁が科される。SDNが直接または間接的に50%以上所有する事業体も当該制裁の対象となる。今回SDN指定を受けた企業などの詳細は、財務省のウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで確認できる。ウクライナ情勢に関する財務省による制裁の全容は、同省の「ロシア関連制裁」のポータルサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを参照。制裁対象に指定した個人・企業などについては、同省外国資産管理局(OFAC)のデータベース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますでCountry欄のRussiaを選択し、Searchをクリックすることで確認可能。

(注2)米国市民、米国永住者、米国の法律に基づく、もしくは司法権が及ぶ域内に存在する法人(外国支所も含む)、もしくは米国内に存在するあらゆる個人を指す。

(注3)米国政府が「米国の国家安全保障または外交政策上の利益に反する行為に携わっている、またはその恐れがある」と判断した団体や個人を掲載したリストで、それらに米国製品(物品、ソフトウエア、技術)を輸出・再輸出・みなし輸出などを行う場合には、BISの事前許可が必要となる。

(注4)8542.31、8542.32、8542.33、8542.39、8517.62、8526.91、8532.21、8532.24、8548.00の9品目。

(磯部真一)

(米国、ロシア、ウクライナ)

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