2022年の対内直接投資(FDI)が過去最高額を記録

(バングラデシュ)

ダッカ発

2023年09月01日

バングラデシュ中央銀行が発表PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)した「対内直接投資(FDI)と対外債務」の統計資料によると、2022年暦年のFDI(ネット、フロー)は、過去最高額の34億7,995万ドル(前年比20.2%増)を記録した。

同国において製造業の進出先は、大きく輸出加工区(EPZ)外(一般の工業用地)、輸出加工区(EPZ)、開発が進められるバングラデシュ経済特区(BSEZ、2023年6月21日記事参照)をはじめとする経済特区(EZ)に分けられ、FDIの構成比はそれぞれ88.3%(EPZ外)、11.6%(EPZ)、0.1%(EZ)となった。前年との比較では、EPZ外への投資が22.9%増と、全体の伸長に大きく寄与した(添付資料表参照)。産業別では前年(世界貿易投資動向2022参照PDFファイル(1.7MB))と同様、主力の縫製(全体の20.3%)、次いで電力(14.7%)で合わせて全体の約3分の1を占めている。

FDIは堅調に増加した一方で、GDP全体に占めるFDIの低さ、および他のアジア諸国との比較の観点では楽観視できず、今後の経済成長への影響を懸念する報道もみられる(「フィナンシャル・エキスプレス」紙8月31日)。世界銀行によると実際、同国のGDP全体に占めるFDIの割合は2013年時点では1.7%で、隣国インド(1.5%)をわずかに上回っていたものの、その後は下降し、2022年には0.3%まで低下した。これは、バングラデシュと同様に、縫製が主産業で消費市場としても注目されるカンボジア(12.9%)や後発開発途上国(LDC)卒業を控えるラオス(5.7%)、ベトナム(4.3%)などとの比較(2021年時点)においても後れをとっている(添付資料図参照)。

当地で著名な民間シンクタンクのポリシー・エクスチェンジ(Policy Exchange of Bangladesh)創設者兼会長で、世界銀行グループのシニア・エコノミストなどを歴任したマスルール・リアズ氏はジェトロのインタビューに対し、「FDIの促進に当たり最も重要、かつバングラデシュにとって課題であるのは、誘致目標の設定と具体的な戦略策定、ならびにそれらを実行するための一貫性だ。例えば貿易に係る制度改革、電力などの基礎インフラに加え、国内外の経済連結性を高めるための港湾、物流インフラのさらなる整備、基準・認証制度の整備などによる市場アクセスの向上などは欠かせない要素となるだろう」と話す(8月31日)。

(山田和則)

(バングラデシュ)

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