中国外交トップと米大統領補佐官が会談、台湾問題について強調も海洋協議など実施へ

(中国、米国)

北京発

2023年09月20日

中国外交トップの王毅・共産党中央政治局委員(注1)は9月16~17日(以下、いずれも現地時間)、マルタで米国のジェイク・サリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)と複数回の会談を行った(米国側の発表は2023年9月20日記事参照)。

外交部によれば、両者は中国・米国関係の安定と改善を巡り「深く、実質的で、建設的な戦略的意思疎通」を行ったとされる。その中で王政治局委員は、台湾問題は両国関係にとって「越えてはならない1番のレッドラインだ」として、両国間の3つのコミュニケ(注2)を厳格に守り、「台湾独立を支持しない」などの同意事項を実行するよう強調した。その上で、中国の発展は強い内生的な動力を持ち、歴史的必然に従ったものであり、阻止することはできず、中国の人々の正当な発展の権利を奪うことは許されないとした。

双方は、引き続きインドネシア・バリ島で行われた首脳会談(注3)の合意内容の実施に向けて、ハイレベルでの往来を維持し、事務レベルアジア太平洋協議、事務レベル海洋協議、外交政策協議を行うとした。また、双方は両国の人々の往来を支援し、円滑化のための措置を探るとした。そのほか、アジア太平洋地域情勢、ウクライナ、朝鮮半島などに関する問題について議論を行った。

なお、両者は5月10~11日にオーストリアのウィーンでも会談を行っている。

また、韓正・国家副主席は米国ニューヨークで開催された国連総会で、9月18日にアントニー・ブリンケン国務長官と、19日にジョン・ケリー気候変動担当大統領特使と会談した。韓副主席は、ブリンケン国務長官との会談では、中国は習近平国家主席が提唱した相互尊重、平和共存、協力・ウィンウィンという3原則に基づき両国関係に当たっているとして、バリ島での首脳会談の合意内容実現に向けた米国の行動を求めた。ケリー特使との会談では、気候変動についての対話と協力を維持することは「両国および全世界にとって重要で前向きな意味を持つ」として、引き続き協力する意向を示した。

(注1)今回の外交部の発表では外交部長(外相)の肩書が記載されていない。

(注2)1972年、1978年、1982年に発表された中国と米国間の3つのコミュニケを指す。

(注3)2022年11月16日記事参照。中国は2023年2月に発生した気球撃墜による関係悪化以降、米国に対して同会談の合意に戻るよう主張している。

(河野円洋)

(中国、米国)

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