「北京市外商投資条例」の意見募集稿発表、外資の政府調達や標準化への平等な参加を明記

(中国)

北京発

2023年09月26日

中国の北京市は「北京市外商投資条例」の意見募集稿外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した。「外商投資法」「外商投資法実施条例」などの投資促進策の実行に向け、北京市の実情に基づき策定された(注1)。9項目44条からなる。意見募集期間は9月20日~10月19日。

日系企業の関心の高い分野(注2)では、政府調達(第21条)について外資系企業の公平な参加を保障するとともに、政府への問い合わせや申し立てに関する制度を整備する。また、問題解決までの間の臨時措置を整備し、申し立てを行ったサプライヤーが政府調達に参加する機会を保護する。その他、外資系企業への差別的扱いに関する特別調査を定期的に行う。

標準化への参加(第22条)については、外資系企業の標準化技術委員会(注3)への平等な参加を保障する。外資系企業の生産・経営と密接に関係する地方標準については、外資系企業の意見を十分に聴取しなければならないとしている。外資系企業が地方標準の策定に参加する場合、条件を満たせば資金支援を申請することができる。

データ越境(第31条)については、データ越境に関する安全評価、個人情報保護認証、個人情報越境標準契約登録などを実施する。条件を満たした外資系企業のために「優先レーン」を設けるほか、自由な流動が可能な「一般データリスト」を制定する。

政策の策定(第19条)にあたっては、外資系企業に関連する地方法規、規則、規範性文書(注4)を制定する際には、外資系企業、商工会、協会などの意見を十分に聴取し、合理的な準備期間を置かなければならないとしている。政府幹部と外資系企業、商工会との対話も定期的に行う(第37条)。

また、外国人投資家に関する国外との間の資金移動も自由で遅延のないものとし、外国籍職員の給与の国外送金も自由に行えるようにする(第32条)。外国籍駐在員の居留に関する利便性向上(第34条)や、外国人投資家や外資系企業の軽微な違法行為は、速やかに是正された場合は行政処罰の対象としない(第41条)といった内容も盛り込まれている。

その他、北京市で投資を奨励する分野(第14条)として「外商投資奨励産業目録」(2022年11月4日記事参照)に掲載されているもののほか、戦略的新興産業(注5)、ハイレベル製造業、現代サービス業(注6)が挙げられている。カーボンピークアウト・カーボンニュートラルへの外資系企業の参加も奨励されている。

(注1)条例の内容の多くは、「外商投資法」「外商投資法実施条例」「外商投資環境のさらなる最適化と外商投資誘致の強化に関する意見」(2023年8月15日記事参照)など既存政策をなぞったものか、一部を変更したものとなっている。

(注2)中国日本商会が2023年6月に発表した「中国経済と日本企業2023年白書」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますでは、政府調達や標準策定などについて、中国企業と外資系企業の平等な扱いを求めている。また、データの越境・管理について、運用の際の事前ガイダンスの提供、関連政府部門間の調整・連携のほか、内外無差別の貫徹を要望している。

(注3)法律上、標準制定への関与が規定されている関係者のグループ。

(注4)国やその他の団体、組織が制定する拘束力のある文書。

(注5)国家統計局による2018年11月7日付の「戦略的新興産業分類(2018)」(国家統計局令第23号)では、(1)次世代情報技術、(2)ハイレベル設備製造、(3)新素材、(4)バイオ、(5)新エネルギー自動車、(6)新エネルギー、(7)省エネ・環境保護、(8)デジタルクリエイティブ、(9)関連サービス業の9つが挙げられている。

(注6)国家統計局による2023年7月14日付の「現代サービス業統計分類」(国家統計局令第36号)では、大分類として、情報通信・ソフトウエア・情報技術サービス、科学研究・技術サービス、金融業、現代物流サービス、現代生活サービス、現代公共サービスなどが挙げられている。

(河野円洋)

(中国)

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