排出量取引制度法案を上院に提出、年1万トン以上のCO2排出企業に排出量上限を設定

(ブラジル)

サンパウロ発

2023年09月06日

ブラジルのレイラ・バロス上院議員は821日、2022年法案第412号(PL412/2022)の内容を刷新して、議会に提出した。今回の法案の目的は、ブラジル温室効果ガス排出量取引制度(SBCE)というキャップ・アンド・トレード式の排出量取引制度(ETS)を設立するもの。具体的には、年に1万トン以上の二酸化炭素(CO2)を排出する企業が対象となり、排出量上限(キャップ)が設定される。また、年に25,000トン以上のCO2を排出する企業には、自らの排出量に相応する排出枠を所有しておくことが義務付けられる。国内では4,0005,000社が義務付け対象企業となる見込みだ。排出枠は、連邦政府から規制対象企業に対して無償あるいは有償(オークション方式)で配分される。実際の排出量が排出枠を上回った企業は排出枠を調達する必要があり、排出量が排出枠を下回った企業から不足分の排出枠を第二次市場で購入できる。

一方で、排出量上限は現在、排出量を正確に測定するシステムがないため、まだ定義されておらず、法案が可決された場合、施行後最初の2年間は排出量の測定のみ義務付けられることになっている。

法案の改定版作成に貢献したラファエル・デュボー財務省特別補佐官は825日付の現地紙「エスタード」のインタビューで、排出量上限は毎年引き下げられると説明している。同特別補佐官は「排出量上限が低くなっていくため、排出枠は高くなっていく。その結果、排出量を抑えない企業は高価格で排出枠を購入せざるを得なくなる。一方、環境にやさしい新技術を導入した企業は排出枠を買う必要がなく、競争力が一層高まるだろう」と、今回の法案の役割を明らかにしている。今回の法案では、SBCEでの義務を果たすためには、政府発行の排出枠以外にも、ボランタリーカーボン市場(注)で発行されたカーボンクレジットの利用も認められている。ただし、利用には連邦政府が今後立ち上げる登録システムへの加入が必要となる。

今回の法案は2022年に炭素市場の法整備を目指すものとして既に提出されていた。取りまとめ役のバロス議員が財務省と協力し、連邦政府内10省庁との調整を経た上で、排出量取引制度などを追加した改定版となった。財務省は612日付の公式サイトで、独自に新法案を国会に提出したい意向を示していたが(2023年8月3日付地域・分析レポート参照)、フェルナンド・ハダッジ財務相は、新規で法案提出した場合より、審議中の法案を改定版として作成し直したほうが審議にかかる時間短縮になるため、改定版が作成されたと述べている(現地紙「エスタード」825日付)。

(注)ボランタリーカーボン市場では、民間事業者が自主的炭素基準に沿って再生可能エネルギー導入や森林保全活動など、CO2を抑制するプロジェクトを承認し、クレジットを発行している。その場合のクレジットは、CO2を排出できる許可ではなく、プロジェクトによって削減できた(と想定される)CO2の量を証するもの。

(エルナニ・オダ)

(ブラジル)

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