米下院の中国特別委、バイデン政権に新疆ウイグル自治区関係者への制裁強化を要請

(米国、中国)

ニューヨーク発

2023年09月21日

米国連邦議会下院の「米国と中国共産党間の戦略的競争に関する特別委員会(中国特別委員会)」のマイク・ギャラガー委員長(共和党、ウィスコンシン州)は9月19日、アントニー・ブリンケン国務長官とアレハンドロ・マヨルカス国土安全保障長官に対し、ウイグル人権政策法(UHRPA)とウイグル強制労働防止法(UFLPA)の厳格な執行を求める書簡を送付外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。両法に基づく制裁発動が不十分だとして、制裁を強化するよう要請する内容となっている。

UHRPAは2020年6月に成立した法律で、大統領に対し、中国新疆ウイグル自治区のウイグル族やそのほかの少数民族に対する人権侵害に責任ある者について議会に報告を求めるとともに、当該者に対して制裁を科すよう義務付けている。2021年12月に成立したUFLPAは、新疆ウイグル自治区が関与する製品の米国への輸入を原則禁ずるとともに、UHRPAで制裁対象となる人権侵害の形態に「強制労働と関連する深刻な人権侵害」を追加した(注)。

ギャラガー議員は書簡で、バイデン政権がこれまでUHRPAに基づく制裁を発動していないことを追及した。政権が中国への関与を模索する中で、制裁発動を遅らせたとの報道に触れ、「中国政府との浅薄で一方的な関与のために、道徳的なリーダーシップを犠牲にしてはならない」と断じた。その上で、新疆ウイグル自治区のトップを含む13人の中国当局者について、UHRPAとUFLPAに基づく制裁発動の基準を満たすかを問いただした。

UFLPAに関しては、25の事業体を挙げた上で、それらが「UFLPAエンティティー・リスト」への掲載基準を満たすかも聞いた。同リストは国土安全保障省が管理し、リスト掲載事業者が生産に関与した製品は輸入禁止対象となる(2023年8月3日記事参照)。書簡では、同リストに既に掲載されている事業者が、制裁対象となるかも明らかにするよう求めた。これらの質問に対し、10月6日までの回答を要求している。

中国特別委員会は、新疆ウイグル自治区に関する公聴会を開いたり、政策提言を発表したりするなど、人権侵害問題への対処を活動の柱の1つに据えている(2023年5月30日記事参照)。バイデン政権は外交で人権を重視する一方、中国との緊張緩和のための対話も追求している(2023年9月20日記事参照)。書簡を受け、国務省報道官は、中国における人権侵害に対する説明責任を追及するため「バイデン政権はこれまでさまざまな手段や外交戦術を活用してきたし、今後も活用していく」と指摘した(ロイター9月19日)。

(注)米国の人権関連法・規制や、サプライチェーンに関わる規制の運用、実務上の対応などについては、調査レポート「グローバル・バリューチェーン上の人権侵害に関連する米国規制と人権デューディリジェンスによる実務的対応」「米国の経済安全保障に関する措置への実務的対応」を参照。UFLPAについては、2022年8月5日付地域・分析レポートも参照。

(甲斐野裕之)

(米国、中国)

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