米NY市、オフィススペースを住宅に転用する提言の進捗状況と今後の計画発表

(米国)

ニューヨーク発

2023年08月22日

米国ニューヨーク(NY)市のエリック・アダムス市長と同市都市計画局(CDP)のダン・ガロドニック局長は8月17日、アダムス市長が1月9日に発表したマンハッタンなどの市内中心地区で使用されていないオフィスを住宅に転用するための提言(2023年5月26日記事参照)に関する進捗報告と今後の計画を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

発表では次の3点を強調している。(1)使用されていないオフィスを住宅に転用する計画をより公正で持続可能な都市のためのゾーニング計画「シティー・オブ・イエス外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」(注)の一環とすること、(2)オフィスから住宅へ転用するという複雑な計画を促進するための「オフィス転用促進プログラム」を開始すること、(3)現在、製造業とオフィスとしてのみ許可されているミッドタウン・サウス地区のゾーニングを改善し、住宅および雇用機会を設けられる活気のある地域にすること。また、これらの計画を即日開始することも併せて発表した。

市は発表で、NY州は2023年1~6月に開かれた州議会で、この件に関する重要な行動をとれなかったが、市としては、土地の利用審査の手続きを通じて市全体のゾーニングを見直し、必要な柔軟性を拡大するとしている。オフィスを住宅に転用する計画では、今後10年間で4万人のNY市民が入居するための2万戸の住居を提供するとしている。

住宅・経済開発・労働力担当のマリア・トーレス=スプリンガー副市長は発表で「NY市民が住宅を探すのに苦労している半面、オフィススペースが入居されずに放置されたままになっているのは合理的ではない。住宅への転用を可能にすることで、NYはビジネス地区を再度活性化し、職場や交通の便の良い場所に住宅を供給する」と述べた。

不動産会社のアビソン・ヤングによると、2023年度第2四半期(4~6月)のマンハッタンのオフィス空室率は前期比で0.2ポイント上昇し、19.9%と過去最高に達したとしている。また、契約済みオフィススペースを面積で見てみると、2000~2019年は各年上半期までに平均約2万100平方フィート(約1,867平方メートル)だったが、2023年上半期はこれより39.5%低い1万2,200平方フィート(約1,133平方メートル)にとどまった。また、この2023年の数値は2022年の同時期と比較しても29.5%減で、新型コロナウイルスが収束した今もオフィススペースの空室率は上昇している。

(注)「シティー・オブ・イエス」は、アダムス市長が2022年6月に発表した市全体のゾーニングを改正する計画。同計画は、カーボン・ニュートラリティーのためのゾーニング(第1弾)、経済機会のためのゾーニング(第2弾)、住宅環境のためのゾーニング(第3弾)の3本柱で構成されている。いずれも公開審査プロセスを経たのち、最終的にNY市議会で審議される(2023年6月16日記事参照)。

(吉田奈津絵)

(米国)

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