鉄鋼など392品目の関税率を最高25%まで引き上げ、日本製はCPTPPなどの活用を

(メキシコ、米国)

メキシコ発

2023年08月18日

メキシコ政府は815日、連邦官報で政令外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを公布し、鉄鋼、アルミニウム、繊維、衣類、履物など392品目の一般(MFN)関税率を、20257月末までの期限で翌日から一時的に引き上げた。関税率は品目に応じて525%となる。世界的な鉄鋼の過剰生産が続いていることや、新型コロナ禍で打撃を受けて回復しきれていない繊維・履物などの国内産業を保護することを目的としている。最も対象品目が多いのは、鉄鋼(HS72類)・同製品(HS73類)で、合計201品目の関税率が25%まで引き上げられた(注1)。なお、202581日以降は、202267日付官報で公布された新輸出入関税法(LIGIE)に基づく税率となり、鉄鋼の場合は多くが0%となる。

対象品目の中には、鉄鋼、自動車内装用部品(HS8708.29.99)、タイヤなど進出日系企業が輸入している品目も含まれる。引き上げは一般関税率を対象とするため、日本メキシコ経済連携協定(日墨EPA)や環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP)を活用した輸入には影響が出ない。また、産業分野別生産促進プログラム(PROSEC、注2)やレグラ・オクターバ(注3)に基づく優遇関税率も適用可能だ。

背後には迂回貿易阻止に向けた米国からの要請も

今回の措置に含まれている鉄鋼・同製品のうち、112品目の関税率については、2022629日付官報公布政令および同年1118日付政令に基づき、202361日に従来の15%から10%となり、その後も段階的に削減され、94品目については2024101日に撤廃されるはずだった(2022年7月4日記事参照)。メキシコでは201558日以降、鉄鋼のMFN関税率が0%になっていたが、鉄鋼の国際的な過剰生産や2018年以降は米国において鉄鋼・アルミニウム232条に基づく追加関税(2018年3月9日記事参照)が課されたことから、代替市場を求める安価な鋼材流入に対抗する目的で201510月以降、関税率を6カ月の期限付で15%まで引き上げ、その後も維持する措置を何度も継続してきた。

今回は以前のように15%に戻す措置ではなく、今までより10ポイントも高い25%まで引き上げる。この背景には、米国議会や米国政府の圧力があるとみられている。米国鉄鋼議員連盟のエリック・A・クロフォード会長とフランク・J・ムルバン副会長は510日、ジーナ・レモンド米国商務長官とキャサリン・タイ米国通商代表部(USTR)代表に書簡PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を送り、メキシコからの鉄鋼輸入の急増は、鉄鋼・アルミ232条の国別除外に関する2019年の合意に違反しており、第三国からメキシコを経由した迂回輸入もみられると指摘し、米国政府にメキシコ政府との早急な協議を要請した(ムルン議員プレスリリース5月17日付外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。これを受けて、USTRのジェイミー・ホワイト次席代表は、810日にワシントンでメキシコ経済省のアレハンドロ・エンシナス通商担当次官と会談し、メキシコ政府に対策を促していた(USTRプレスリリース8月10日付外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

(注1HS7210.70.02、および7212.40.02に分類される塗装・ニス塗布・プラスチック被覆鋼板に限り、2023年中は現行の関税率10%が維持され、202411日から20257月末までが25%となる。

(注2)メキシコ政府が国内生産を促進する24の業種で生産活動を行う企業が登録を行い、特定の部品・原材料、機械設備を優遇関税で輸入できるプログラム。

(注3PROSECの優遇関税の対象になっていない品目について、国内生産がない、あるいは不十分などの理由を基に、PROSEC登録企業が経済省から特別輸入許可を個別に取得し、承認された数量枠内に限り、原則無関税で輸入を認める制度。

(中畑貴雄)

(メキシコ、米国)

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