米国とメキシコ、メキシコの自動車部品工場での労働問題の改善策で合意

(米国、メキシコ)

ニューヨーク発

2023年08月02日

米国通商代表部(USTR)は7月31日、メキシコ中部グアナファト州イラプアト市に所在する自動車部品メーカー、ドラクストンの工場で発生していた労働権の侵害について、メキシコ政府と改善策で合意したと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

USTRはこの件について、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)で定めている「事業所特定の迅速な労働問題対応メカニズム(RRM)」に基づき、5月にメキシコ政府に事実確認を要請していた(2023年6月1日記事参照)。メキシコ政府はこの要請を正式に受諾し、調査の結果、労働権の侵害があったと7月14日に結論づけていた。両国間で合意した改善策によると、メキシコ政府は、ドラクストンが労働組合活動への参加を理由に解雇した労働者の地位を回復し、組合活動に参加する労働者に対して差別や脅迫的な行為を今後しないことや、団結の自由と団体交渉権を尊重することなどを約束した文書を労働者に配布して工場内に掲示すること、職員の行動規範に関するガイドラインを発行し組合員を含めた全ての職員に研修することなどを10月30日までに確実に実行することになっている。

RRMのルールによると、ドラクストンが今後、合意どおりに改善策を履行し、両政府が問題の解決に合意すれば、案件は終了する。合意できない場合、提訴国の米国は15日前の書面通知をもって、ドラクストンの同工場からの輸入に対し、USMCAに基づく特恵関税の適用停止など制裁措置を発動することができる。ただし、被提訴国のメキシコは、通知を受理してから10日以内であれば、紛争解決のためのパネル設置を要請することができ、米国はパネル審議が終了するまで制裁発動を控えなければならない。ただし、これまでRRMが発動されて手続きが完了した案件は、メキシコ政府の協力もあり、全てパネル設置前に解決されている(添付資料参照)。ドラクストンが10月末までに改善策を履行できるかに注目だ。

キャサリン・タイUSTR代表は声明で「メキシコ政府はこの件について素晴らしいパートナーであり、今後も継続して連携していくことを期待している。米国は改善策の実施状況を注意深く監視していく」と述べている。

(磯部真一)

(米国、メキシコ)

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